幼児期に心の安全基地を築けなかった子どもは大人になっても不幸な人生を歩む

――LINEの返信に集中したり、スマホのゲームアプリに夢中になったり。誰でも自然とやっていることが、プチ虐待につながってしまうのですね。

諸富:そう、そこがスマホ依存の怖いところです。

スマホに夢中になっているお母さんたちは、自分が子どもを無視していることに気づいていない。

当然、悪いことをしているとも感じていない。我が子をプチ虐待していることにまったく無自覚なんですよ。

さらにもうひとつ、スマホ依存しやすいお母さんというのは、内心「子育てが面倒くさい」と感じ、子育てにイライラしている人が多いんですね。

だから、現実逃避ではないけれど、ついついスマホの世界に逃げ込んでしまう。

こういうお母さんは子どもへの対応も気まぐれです。

自分がスマホに夢中になっているときは子どもを無視したり、「うるさい!」「泣かないで!」と大声で怒鳴りつけたりするのに、自分の機嫌がいいときは、子どもをあやしたり、一緒に遊んでやったりもする。

――子どもへの接し方が一定していない。

諸富:そう、そうすると子どもの心はますます不安定になっていきます。

あるときは優しいけれど、あるときは無視されたり怒鳴られたりする。その結果、「自分は、無条件にお母さんに愛されている」と実感できず、自分自身に自信が持てない子になってしまう。

大人になってもずっと幸せな人生を歩んでいくためには、「自分は愛されるに値する存在だ」と感じられる心の土台が絶対に欠かせません。心の安全基地と言ってもいいでしょう。

そして、この心の安全基地は、3歳までの間にいかにお母さんと安定した関係を築くかによって造られていくものなんですね。

スマホべったりで、気まぐれ育児をしているお母さんに育てられた子どもは、この心の安全基地がきちんと造られないまま大人になってしまう。

そのせいで、「どうせ自分は幸せになる価値などない人間だ」という思考回路が定着し、なぜか人生を「悪いほうに、悪いほうに」と運んでいき、「不幸になるように、なるように」と生きていく。

これは本当に恐ろしいことですよ。

――母親のスマホ依存が子どもの将来まで不幸にするなんて……。

諸富:そう、たかがスマホとあなどれない。

幼いころに、母親から無視されたり怒鳴られたり、あるいは気まぐれな接し方で育てられると、大人になったとき、その子も他人に対して同じような接し方しか出来なくなってしまいます。

その結果、親しい友達もできず、結婚もできず、職場の人間関係もうまくいかない。

わが子にそんな不幸な人生を歩ませないためにも、お母さんたちには、一刻も早くスマホべったりの生活をあらためてほしいのです。