LINEの返信は子どもから見えない場所で。使う時間を決めること。

――お話を聞けば聞くほど怖くなってきましたが、かといってスマホをまったく使わないわけにもいきません。

諸富:えぇ、スマホ自体が悪いわけではありませんから。要は、使い方に気をつければいいのです。

理想は、子どもが起きているときはスマホを見ないこと。

とはいえ、LINEやSNSの急ぎの返信もあるでしょうから、いまどきのお母さんたちにはかなり難しい。

そこで、おすすめしたいのが使う時間を決めること。たとえば、子どもと1時間遊んだら、大事な連絡がきていないどうか、5分間だけスマホをチェックするというようにルールを決める。

その際に大切なのは、「自分が無視されている」と子どもが感じないように、子どもから見えない場所でスマホを使うこと。家の中で、いちばんいい場所はトイレです。

子どもの機嫌がいいときに、「お母さん、ちょっとトイレに行ってくるね」と声をかけ、トイレの中でLINEの返信をする。そうすれば、子どもは自分の存在を「無視されている」とは感じません。

――子どもが寝ている間は、好きなだけ使ってもいいんですよね?

諸富:もちろんです。ただ、いくらゲームやネットサーフィンにはまっていても、子どもが起きてきたり、泣き声をたてたら、すぐにスマホをやめて、子どもに関心を向けること。

乳児の場合は、たとえ泣かなくても、何も言わずにじーっとお母さんを見つめていることがよくあります。そんなときも、いちはやく子どもの視線に気づいてそばに行ってあげることが大切です。

こうしたほんのわずかな心がけで、子どもの心は安定します。

ご自分のお子さんが、すでに3歳を過ぎてしまった方、小学生になってしまった方でも決して遅くない。

気づいたときから、スマホとのつきあい方をあらためるようにしていけば、それまで不安定だった子どもの心も徐々に落ち着いていくはずです。


日ごろ、あたりまえのように使っているスマホが、子どもの心にこんなにも悪影響を及ぼしていたなんて!

母親なら、可愛いわが子に幸せな人生を歩んでもらいたいと思うのはみんな同じ。スマホべったりの育児は“プチ虐待”につながると意識して、今日からスマホの使い方を、ぜひ見直したいものですね。

今回お話を伺った諸富祥彦先生の著書『スマホ依存の親が子どもを壊す』(宝島社)には、ママたちのスマホ依存を解消する具体的な方法の数々や、小学校高学年から高校生までの子どもたちをスマホ依存にさせない方法も解説されています。

スマホが手放せないママたちの良きルールブックとなる1冊です。

●諸富祥彦(もろとみ・よしひこ)

1963年、福岡県生まれ。明治大学文学部教授。教育学博士。臨床心理士、上級教育カウンセラーなどの資格も持つ。「すべての子どもはこの世に生まれてきた意味がある」というメッセージをベースに、20年以上、さまざまな子育ての悩みを抱える親に、解決法をアドバイスし続けている。『10歳までの子育てのルールブック』『男の子の育て方』『女の子の育て方』など。最新刊は『「プチ虐待」の心理』(青春新書)。

 

 ライター。成城大学文芸学部卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。専門は人物インタビュー、女性のライフスタイルや健康、動物愛護やペットに関するルポなど。『STORY』『HERS』『婦人公論』など、様々な女性誌でも執筆中。