たまきとゆみね『ヨナカジカル』(『ステラのまほう』)

『のんのんびより』シリーズや『田中くんはいつもけだるげ』といった独特のオフビート感覚と心に響くエモーションを持ったコメディ作品を世に送り出し、アニメファンからの支持を得ている川面真也監督の最新作となるテレビアニメが『ステラのまほう』です。

高校の同人ゲーム制作部を舞台に、部員である女子高生たちの青春模様を描く本作。

個人的に、ゲーム制作をテーマにした作品ということで、主題歌にはピコピコしたチップチューンなテクノポップが使用されるのでは……と予想していたのですが、いざ第一話のエンディングで対峙した『ヨナカジカル』は、こちらの矮小な想像力を遥かに凌駕する凄まじい楽曲でした。

メロディもリズムも共に、どこまでも幽玄的な響きであり、キラキラした美しさとスペーシーなスケール感を併せ持つ楽曲は、聴く者の感性を飲み込むかのような奥行きのある仕上がりに。アブストラクトなエレクトロサウンドとでも称すべきハイセンスなテクノナンバーとなっています。

四つ打ちのビートや享楽的なシンセサイザーの音色などのアッパーなテクノ、ダンスミュージックに必要な要素を排した構成は、一種のストイックさを感じさせます。かなり実験的な手触りもするサウンドですが、そんな楽曲と『ステラのまほう』という作品が持つポップで可愛らしい世界観とのコントラストが如何にもおもしろく、この曲の印象をより鮮烈なものにしています。

また、歌を担当する女性声優さんの歌声にエフェクトを掛けるという思い切った作りにも驚かされました。キャラクターソングというと、やはり主役となるのは声優さんの「声」であり「歌」です。そこに思い切りエフェクトを掛けてしまうという意外性の楽しさと大胆さは、リスナーにインパクトとアニソンが持つ表現力の豊かさを同時に伝えてくれます。

『バニラソルト』を経て"テクノ化"した堀江由衣さんの一連の楽曲や、その堀江さんと表裏一体の存在である『ミス・モノクローム』関連のトラックと同じく、「電子音楽」と「声優ソング」の幸福な結晶体として、テクノリスナーにも是非とも手に取っていただきたい一曲です。

かぷせるがーるず『KAIJUハート』(『怪獣娘~ウルトラ怪獣擬人化計画~』)

実験的かつアブストラクトなサウンドの楽曲が二曲続きましたが、次は、抜群にメロディが立ったエンディング主題歌をピックアップさせていただきます。

dアニメストアをキー局として配信中のWEBショートアニメ『怪獣娘~ウルトラ怪獣擬人化計画~』は、KADOKAWAが展開しているメディアミックスプロジェクト『ウルトラ怪獣擬人化計画』のアニメ版となる作品です。

特撮SFヒーロードラマ『ウルトラマン』シリーズに登場した怪獣たちを女の娘に擬人化する本プロジェクトですが、アニメ版でもピグモンやゼットン、ゴモラといったシリーズ屈指の人気怪獣たちが女の娘になって登場しており、非常に可愛らしくポップな物語が展開されています。

各キャラクター……「怪獣娘」たちの魅力に加えて、劇伴に人気作曲家の高梨康治氏が参加するなど、音楽面にも要注目な本作は、オープニング、エンディング共にチャーミングな楽曲が揃い踏みしています。

特にオススメは、エンディング曲の『KAIJUハート』です。歌うは、本作で主役となるカプセル怪獣のアギラ、ミクラス、ウインダムの3人によるスペシャルユニット「かぷせるがーるず」。それぞれの担当声優である飯田里穂さん(アギラ役)、鈴木愛奈さん(ミクラス役)、遠藤ゆりかさん(ウインダム役)のお三方は、歌唱力も抜群! ユニゾンによる美しい歌声は必聴です。

また、作曲の「buzzG」氏によるバンドサウンドを強く意識した音もロックかつポップで、何よりメロディの素晴らしさが耳に残ります。

「キレの良いやつ、頼みます!」……というのは、現在好評放送中のシリーズ最新作『ウルトラマンオーブ』の決め台詞ですが、そんなフレーズを引用したくなる程、メロディが持つキレの良さが際立つ"エモ可愛い"サウンドは、この曲にとって何よりも強い魅力となっています。

『怪獣娘』のキャラクターや作品世界と同様に、どこまでもキュートなポップソングとなっている『KAIJUハート』。オリジナルの『ウルトラセブン』では、その戦闘能力と汎用性の低さ故に全く役に立たなかったカプセル怪獣が遂に主役になり、しかも主題歌まで歌っている……という感動も込みで、ウルトラシリーズのファン、そして何よりアニソンファンにチェックしていただきたいナンバーです。

制作形態がショートアニメということで、アニメ本編には少ししか使われていない為、これはCDで購入いただき、フルサイズで聴いて欲しいところです。ジャケットには、キャラクターデザインを担当した富岡二郎先生によるカプセル怪獣たちのチャーミングな描き下ろしイラストが使われており、こちらも必見ですよ!