『イシュカン・コミュニケーション』(『小林さんちのメイドラゴン』)
続いては、冬アニメの人気作の一つである『小林さんちのメイドラゴン』のエンディング主題歌『イシュカン・コミュニケーション』をご紹介させていただきます。
この曲は、劇中に登場するドラゴンのトール(CV.桑原由気さん)、カンナ(CV.長縄まりあさん)、エルマ(CV.高田憂希さん)、ルコア(CV.高橋未奈美さん)の四人によるユニット「ちょろゴンず」による楽曲です。
作曲は、本作のオープニングで『青空のラプソディ』を歌う「fhana」のメンバーである佐藤純一さんが担当、編曲にはシンガーソングライター、コンポーザーとして活動している「rionos」さんが参加しています。
どことなく、ネオアコの影響を受けた90年代ジャパニーズポップスの雰囲気を感じられる楽曲で、そのメロディには、可愛らしくもちょっとお洒落で大人びたムードが漂っています。
編曲に関していえば、コンピューターを使ったDTM的な音作りが中心かと思うのですが、一つ一つの音に表現力が伴っており、色彩豊かなサウンドが広がっている為、実際の音数以上にスケール感を体感できる豊潤な音作りがなされているという印象を受けました。
そうしたウェルメイドなサウンドに合わせて、歌の方も多くの聴きどころを持つ贅沢なポップソングとなっています。
演技力に加えて歌唱力も持ち合わせている若手女性声優さんの歌声は、とても安定感がありますし、サビの合唱パートでの声の相性も良い。「歌手」として、主線のメロディを拾いつつ、「声優」としてもそれぞれが演じるドラゴンのキャラクター性を押し出した歌は、キャラソンの醍醐味に溢れています。
『ユメミル雨』(『ハンドシェイカー』)
冬アニメの中でも、音楽面での充足が目を引いた作品が『ハンドシェイカー』です。
同作を手がけるスタジオ「GoHands」製作である『K』シリーズと同じく、クラブやストリートカルチャーとシンクロした楽曲の数々は、いずれも聴き応え十分。「GOON TRAX」のレーベルオーナーである寿福知之さんが音楽面をプロデュースした『石膏ボーイズ』と併せて、アニメファンのみならず、音楽ファンにもチェックをして欲しい作品です。
そんな『ハンドシェイカー』のエンディング曲、新居昭乃さんが手がける『ユメミル雨』は、美しくて、でも、どこか儚くて。その歌声も音楽も、アンビエントな感触があって、しかしながら、聴き終わった後には必ずメロディが頭に残る……そんな独特の「新居昭乃ワールド」は、最新曲となる今作でも圧倒的な煌めきを放っています。
昨年、メジャーデビュー30周年を迎えた新居昭乃さんですが、その活動は、この方にしか作り得ない"音楽"に向けて、更なる前進を続けています。
最低限の音響によって形作られた世界は、どこまでもストイックですが、かといって息苦しさはなく、むしろ、音と歌に込められた音楽的な"含み"がリスナーの想像力を刺激してくれる、そんな広がりのある楽曲です。
新居昭乃さんさんの楽曲は何れも、ポップといえばポップですし、前衛といえば前衛でもあります。ただ、間違っても眉間に皺を寄せて、難しい顔をして聴くことを強制させられるような難解な音楽ではありません。
『ユメミル雨』も実に新居昭乃さんらしい楽曲で、先進的な音響の広がりと"歌モノ"として耳に馴染む穏やかな歌声が、とてもバランス良く両立しています。個人的にも、非常にオススメの一曲です。
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