── 特番の反響はいかがでしたか?
松尾 通常の特番より聴取率も高かったですし、休日とは思えないくらいの数のメールが全国から届きました。
私が放送全体の構成を担当していたので、リスナーのメールにも全部目を通したんですが、読んでいるだけで涙ぐんじゃうような、心温まるようなメッセージが多かった。在宅しているリスナーに、ライブコンテンツが深く刺さっている、心に届いていることを強く感じました。
やっぱり音楽やラジオは人の心に寄り添えるものなんだというリアルな手応えを得た。それが次のステップに進む一番大きなきっかけだった気がします。
── 4月1日からは「#音楽を止めるな」プロジェクトをスタートさせています。これはどういうきっかけで始まったんでしょうか。
松尾 僕らは普段からとにかく音楽文化にお世話になっていて、J-WAVEのオンエアを構成しているコンテンツの7割ぐらいは音楽なわけです。
なので、音楽業界が難しいことになっているのであれば、僕らとしても何かをすべきだという話が会社の中で自然発生的に起こっていたんですね。
その中で「#音楽を止めるな」というハッシュタグを使った発信が『SONAR MUSIC』という平日の夜9時からやっている番組の中で始まった。それが「いいな」と思ったんですね。だったらこれを局全体でやれないのかっていう議論に転換していったということです。
── トップダウンではなく現場の思いから立ち上がったプロジェクトだったということでしょうか。
松尾 もちろん、編成の幹部も音楽業界への支援の話をいろんな人としていたんです。それと並行して、現場で「#音楽を止めるな」という発信が始まった。
そういう現場の出演者やディレクターの思いが詰まったひとつの言葉に集約して、それをプロジェクト化しようということになっていったんですね。
僕らが最初に話したのは、とにかく「走りながら考えればいい」ということですね。とにかくスピード感が大事で、不格好でも、理屈が通っていなくても、とにかくスタートしようと。そのスピード感を重視したプロジェクトでした。
── 「#音楽を止めるな」プロジェクトではどういうことを企画したんでしょうか。
松尾 みんなで話を持ち寄って、いろんなアイディアがいくつも並行して動いていった感じですね。最初に動いたのは、コンサートが中止になってコンサートグッズが余っちゃったんじゃないかということで、ライブTシャツを買い取って、それをリモデルして再販するというプロジェクトでした。
『SEASONS』という土曜日の番組のナビゲーターをやっているマリエさんが僕のところにアイデアを持ってきたんです。それを受けて、まずは音制連の野村達矢会長に話をしにいった。
その話の中で「今はこんな問題がある」「プロダクションやマネジメントの人間はこんなことを考えている」ということを聞いて、音楽業界が抱えている課題がすごくよくわかったんです。
その状況を目の当たりにして、もっと具体的なプロジェクトを立ち上げなきゃいけないと考えました。そんなときに、たまたまJ-WAVEの看板番組の『J-WAVE TOKIO HOT100』のスポンサーであるクレディセゾンさんから「投げ銭の仕組みがあるので何かできませんか」という相談があった。
こんな時期だからこそ、音楽業界やいろんな支援に使えるような形でそれを使えないかということで動き始めたんですね。そこでゴールデンウィークにラジオ上のフェスをやろうということになった。
それが5月6日にやった『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL #音楽を止めるな ~STAY HOME FESTIVAL〜』という特番でした。
「#音楽を止めるな」という旗印のもと、いろんなミュージシャンに参加してもらって、ステイホームでのライブをやりながら、そこにいろんなチャリティの要素を入れ込んで、フェスにしていった。それが二つ目のステップでした。