一年生になった(りぴーと1話)
第一期の好評を受けて製作された第二期『のんのんびより りぴーと』の導入部にして、前期と変わらぬそのクオリティの高さがファンを魅了したエピソード。
この回では、一期の第1話「転校生が来た」以前の物語……つまり、蛍が旭丘分校に転入してくる前の物語が描かれます。ドラマの中心は、小学生へと進級したれんげの物語。
新しく買ってもらったランドセルを背負い、通学の練習を行うれんげの姿を軸に、各登場人物のキャラクター性や前作と変わらぬ長閑で美しい風景が丁寧に綴られていきます。
前期の「復習」としてのニュアンスを持つシナリオに、蛍が加わって物語が本格的に動き出す前の"プレストーリー"を持ってくる構成が美しく、何とも粋です。
本作特有のゆったりとした時間の中で描かれていくドラマ性は、本作の変わらぬ魅力を改めて伝えてくれました。
通学途中でれんげが拾う「伝説の剣」(実際はただの木の枝)のように子どもの目線に世界観をチューニングした描写や、お辞儀と同時に開くランドセルの蓋など、幼少期のノスタルジックな感性を思い起こさせてくれる秀逸なシークエンスの数々も見逃せません。
このエピソードを観た後で、無印の『のんのんびより』を観返してみると、主にキャラクター同士の関係性の部分で色々と情感が増すかと。新シリーズの幕開けを鮮やかに飾ってくれた一編です。
てるてるぼうずを作った(りぴーと4話)
前述の「夏休みがはじまった」と同じく、『りぴーと』で最もエモーショナルな輝きを放つのが、この「てるてるぼうずを作った」です。
前半では、雨を降り止まそうとてるてる坊主の衣装を身に纏ったれんちょんが繰り広げるドタバタコメディが、そして、後半では教室内で飼育していたカブトエビを巡る命の物語が描かれます。
一話の間での緩急の付け方が他の話数に比べても際立っている上に、「飼育していた生き物の死による別離」という、幼少期に大多数の人が経験をしているであろう哀しみを、雨の情景に絡めて描写する演出が巧みで、この挿話も観る者の切なさを掻き立てるエモーションに満ちています。
可愛く、明るい(そして、ちょっとシュールな)コメディドラマの中に、こうしたシークエンスを入れてくる奥深さ、これもまた『のんのんびより』という作品の持ち味なのです。
ちなみに、本エピソードには、「夏休みがはじまった」と同じく絵コンテで川面真也監督が参加をしており、作品に凛としたイメージを与えています。
『のんのんびより』の大ヒット以降、『田中くんはいつもけだるげ』『ステラのまほう』と、独特な「間」を意識したちょっぴりビザールなコメディアニメの良作を生み出し続けている川面監督ですが、そうした良質なコメディを世に送り出す一方で、この「てるてるぼうずを作った」のようなセンチメンタルなエピソードを描くタッチの巧みさも大きな魅力です。
監督の作家性を垣間見るという意味でも、『りぴーと』における一つのハイライト的な話だと思います。