子どもとの関係は幼児期だけではありませんね。一生続くわけです。

別に子どもに老後の面倒をみてもらおうなんて思っていなくても、子どもとは大人になってからも良い関係を続けたいですよね。

「親のせいで…」ではなく「親のお蔭で」と言ってもらいたいものです。

グローバル社会に生きる子どものための6歳までに身に付けさせたいしつけと習慣』の著者で、日本・欧米いいとこどり育児を提唱する平川裕貴が、今回ご紹介するのは、1971年からアメリカで始まった研究です。

生後6週間から5歳までの教育が、大人になってからの親子関係や就職に決定的な影響を及ぼすというのです。

アベセダリアンプロジェクト

1971年からノースカロライナ大学の「フランク・ポーター・グラハム子ども発達研究所」で始まった「アベセダリアンプロジェクト」は、新生児から就学前の子ども達を対象にした幼児教育に関する研究です。

研究対象の子どもが、35歳になるまで追跡調査がなされた長期にわたる研究で、幼児期の教育が大人になってからも影響するのかについて大きな成果をもたらしました。

実験&調査は、“幼児教育を受けるグループ”と“受けないグループ”にランダムに分けて行われました。

どちらも保健医療や家族のサポートなどの公的サービスを受けましたが、前者には、週5日、5年間の質の高い教育を受けさせたのです。

その結果、“幼児教育を受けたグループ”が、大学への進学率が高く、良い仕事に就くことができ、健康状態や大人になってからの親子関係も良いという結果が出たのです。

質の高い幼児教育とは?

この研究で、研究者は、人とうまく関われるか、自らの繁栄と、繫栄を人にもたらすことができるかどうかは、幼児期の教育にかかっているということを発見しました。そして、彼らをケアする大人との関係が大切で、それが”魔法の要素“であると言います。

ここで気になるのは、幼児期の質の高い教育とはどんなものかということですね。

文字を教え込んだり、計算をどんどんさせることでしょうか?

実は早期教育として就学前に文字や数や計算を教えると、確かに最初のうちはそういった教育を受けなかった子達より成績は良いのですが、その差は小学校2年生頃には消滅すると言われています。

学校にいる間はテストの点数で「頭の良し悪し」が判断されることが多いです。でも、社会に出てからの長期的な成否は、必ずしもテストの点数で計られた能力が好影響を与えるとは限らないということが、数々の研究で明らかになっています。

このプロジェクトが重点を置いたのは、いわゆる英才教育と言われるようなものではなく、言語教育と読書でした。

質の高い教育とは、大人との十分な会話と、たくさんの読書という非常に緩やかで自然なものだったのです。