イズミルとキャロルは、第二幕でしか絡みがないんです。
一幕でイズミルが出てくるのは、最初と最後のシーンだけで。イズミルは舞台に出ていない間に、自分の妹が殺されてしまうんです。
原作のコミックでは、妹が殺されたという悲しみや怒りは、物語の進行とともに募らせていくんです。だけど舞台では、その思いを舞台裏で想像しなきゃいけない。
そして、その思いを持って、一幕のラストに、“妹を思って、エジプトへ復讐に行く”という歌詞の『黒い翼が悲劇を運ぶ Black Wings Bring Tragedy』を歌うんです。
イズミルが舞台でその歌を歌っているとき、私は舞台裏にいるんですが、歌を聞きながら、
“うっわぁ…、イズミル、今日、すごく怒ってる…”
“今日は、悲しみと怒りを心に秘めて歌ってる”
“今日はいつもより、感情がめちゃくちゃ外に出ちゃってる”
とか。歌から感じとれるものが毎回違うんです。
私は毎回、そのイズミルの歌声を聞いて、二幕で初めて、イズミルの前に出るキャロルを作っていて。イズミルと出逢った後のお芝居を、どう進めていくか、あの歌で決めるんです。
だから『Black Wings〜』は、私にとってもすっごく重要な歌だったんです。
その話を、あるときマモ(宮野真守)さんに、話す機会があって。そうしたらマモさんも、
「そう! 『Black Wings〜』がすごく難しくって。二幕のイズミルをどう作るか考えながら歌うからすごく難しい 」
って、話してくれて。
「佐江ちゃんも舞台裏で、そういう思いで聞いてくれていて嬉しい」
って、『Black Wings〜』に、そういう思いを持っていることをお互いに知らなかったから。本当に偶然に、偶然が重なって、お芝居が成り立っていたんだなぁって。それを知ったときは、すごく嬉しかったです。
自分たちのこういう小さな“キャッチボール”がお芝居に表れることで、お芝居が変化していく。観ている方たちに、毎回、新鮮な気持ちで作品を観てもらえるようになる、きっかけのひとつになるのかなって、思いました。
今回はそれがすごく分かりましたし、やっぱり自分が出ていないシーンを無視するのは、役者として、私はできないことだなって思いました。
ーーそれは東京公演の頃からそう思っていた?
-
[最終回]「ミラチャイ」連載は「人間味のある宮澤佐江」を作った"ホーム"で"チャレンジ"できる場所&芸能活動を一時休止する理由とできた目標
佐江ちゃんにとって「ミラチャイ」は、「ホーム」のような感覚だった。なぜ今、お休みをするのか、ありのままの思いを話してくれました。約6年間、200回を超える連載の最終回です。
-
[第51回]宮澤佐江「ミラチャイ」連載の6年、200回も続いた理由がインタビューでみえたー仕事、境遇、思いに向き合う
48グループと舞台。2本の軸を歩むなかで出会った人たちが、佐江ちゃんにもたらした、卒業後の大きな変化とは。「ミラチャイ」連載を彩った数々の写真やエピソードで当時を振り返っていくと、約6年にわたる長期連載になれた理由が見えてきました。
-
[第50回]宮澤佐江と「ミラチャイ」連載の6年、200回以上を振り返っていくーやっと笑って話せるあのときのこと
どんなに時間が経っても変わらない、佐江ちゃんの「根っこ」にあるものとは。48グループを出てわかったこと。今、やっと笑って話せるあのときのこと。最終回に向けて、さらに尽きないお話です。
-
[第49回]宮澤佐江が新「ミラチャイ」連載で振り返る、舞台とともに駆け抜けた2年間ー「出会い」と「別れ」さみしさと楽しさ
「これまでやってきたことの答え合わせが、今、できている」。2016年7月の新連載開始から現在まで、『朝陽の中で微笑んで』、公演中の『ZEROTOPIA』など、佐江ちゃんの約2年を振り返ります。
-
[第48回]宮澤佐江が新「ミラチャイ」連載で振り返る、舞台とともに駆け抜けた2年間【大切なお知らせあり】
2年前の7月、リニューアルして再スタートした「ミラチャイ」連載。『王家の紋章』初演にはじまり、現在公演中の『ZEROTOPIA』まで。舞台とともに駆け抜けた、佐江ちゃんの2年を振り返ります。