左:市井昌秀(映画監督)、右:MEGUMI(女優)

【第3夜】『無防備』市井昌秀(映画監督)×MEGUMI(女優)

第3夜は、前夜に続き市井昌秀監督が登場。前夜に披露された『隼』から2年後の2008年に発表した『無防備』を上映する。

究極の女優魂が封じ込められていると言っていい本作を、女優のMEGUMIはどう評する?

リアルな出産シーンはまさに女優魂! 市井監督の入魂の1作にMEGUMIは何を思う?

PFFアワード2008でグランプリをはじめ4賞に輝き、同年の釜山国際映画祭でも新人監督作品のコンペティション部門で最高賞を受賞した『無防備』は、生命の誕生の瞬間である“出産”を大きなテーマに据えている。

主人公は、プラスチック工場で働く30代の主婦、律子。かつて不慮の事故によって流産した彼女は、その悲しみがいまだに癒えていない。

表には出さないが、夫との関係は冷え切り、相談できる相手もおらず、薬を飲まないと眠れないほど追い込まれている。

そんな彼女の前に現れたのが、大きなお腹をした妊婦の千夏。「夫が無職で自分が働かないと」と笑いながら周囲に明かすほど、あっけらかんとした性格の彼女が工場で働き出す。

作品は、不幸の底をただよう律子と、幸せの絶頂を迎えようという千夏を対比。不条理かつ皮肉なこの出会いをきちんと受けとめた律子が壊れかけた心の再起へ向かう過程が丹念に描かれる。

『無防備』 ※PFFアワード2008グランプリ

当時、PFF審査員を務めた香取慎吾が絶賛の声を寄せた本作は、市井監督が映画と心中したのではないかという入魂作と言っていい。そのことを象徴しているのが出産シーンだ。

作品は、妻で女優の今野(現・市井)早苗の妊娠が出発点となり、市井監督はそこからアイデアが膨らみ、脚本を作り上げた。すると監督はなんと今野をキーパーソンの妊婦、千夏役に起用。

実際の妻の出産を、作品の出産シーンとして撮るという、掟破りとも言うべき手法の撮影に挑んだこのシーンは、公開時に大きな反響を呼んだ。

ちなみに当時のインタビューで市井監督が、妻である今野は出産撮影に対して「抵抗はまったくなかった」と明かしている。

もうこれは、撮った方もさることながら、実際に出産しながら、千夏という役を演じ切った今野もすごいのひと言。もはや離れ業とも言うべき仕事をやり遂げたその女優魂に恐れ入る。

その後、市井監督と今野は映画『台風家族』の公開前に、共同名義の市井点線で小説版『台風家族』を発表。

その映画版に出演し、ミニシアター支援活動を共に行うほど市井監督と意気投合した“盟友”でもあるのが今宵のゲスト、女優のMEGUMIだ。

女優魂を見せつけられた後、女優は何を思うのか? ふたりが語り合う映画作りへの熱い想いに期待が高まる。

【第3夜】7月6日(月) 21:00~
上映:市井昌秀監督作品『無防備』(※PFFアワード2008グランプリ/初配信)
トーク:市井昌秀(映画監督)×MEGUMI(女優)