手軽にレパートリーを増やすコツはスパイス!

――塩以外に、おすすめの調味料はありますか?

志麻さん:塩以外には、フレンチでよく使うのはコンソメ。和食も中華も出汁があるじゃないですか。洋風の料理はコンソメが味のべースになるので。

他に便利なのはトマト缶。洋風の煮込みを作るときにあると便利です。

あと、スパイスって使い切れなくて香りが飛んじゃったり、気が付くと賞味期限が過ぎてるっていう方が多いんですが、いつもの料理の雰囲気を変えるのにすごくいいです。エスニックを作りたいときにも活躍しますね。

うちにあるのは、クミンとコリアンダーとチリパウダ―、カレー粉です。

例えばちょっとお肉にカレー粉をまぶしておいてから肉じゃがを作ると違う雰囲気になったり、お肉にチリパウダーをまぶしておいて、トマト缶を入れて肉じゃがを作るとエスニックな肉じゃがができたり。

肉じゃがって誰でもみんな作ったことがあると思うんですけど、いつもの肉じゃがにスパイスとかトマト缶を使ってやってみるだけでレパートリーも増えるんですよ。

――レパートリーがなかなか増えないというのは日々の献立を考える上の悩みだと思うので、スパイスでレパートリーが増えるのはありがたいです。

豚すね肉のトマト煮込み

志麻さん:和の出汁をコンソメに変えて煮込んでみるだけでも全然変わりますよ。

私も、冷蔵庫を開けた瞬間に何百種類ものレシピを思い浮かべているっていうよりは、この肉をどういうふうに調理しようかなって思っているくらいなんですよ。焼くのか煮るのか、その中でトマト味にしようかなとか、カレー味にしようかなとか、それくらいで。

そう考えているほうがレパートリーも広がるし、肉じゃがとか決まったスタイルがあるものならそこに違うアイテムを足して違う味にするとか、それだけでいいと思いますけどね。

――じゃあ、レシピがあって、これを作りたいからこの材料を買ってこようというよりは、素材がありきでそのつど料理法を考えていく感じですか?

志麻さん:そうですね。買い物に行くと、入り口近くの野菜を通り越してまず、魚や肉を見て食べたいものや安売りしてるものを買います。焼こうかな、煮ようかな、揚げようかな、と考え、例えば今日は暑いからサッパリ食べたいな、などその日の体調や気分で調理方法を決めます。

そうしたら野菜のほうに戻って、あ~これ最近食べてないな、今はこれが旬だな、とか、メインとの組み合わせを見て買う。

これ作るからこの材料買わなきゃ!って、帰り道にレシピのことで頭がいっぱいになる…なんていう話も聞きますが、それってけっこう苦痛ですよね。

レシピにこだわりすぎると楽しくなくなっちゃうので、そういうときはレシピから離れてもいいと思うんです。これを作らなきゃいけないってものはないと思うので、食べたいって思ったものを食べれられれば。

もっと自由に、レシピは牛肉だったけど鶏肉が安いから鶏肉で作ろうとか、料理を気楽に考えると楽しくなると思います。

手抜きとか時短料理とか、悪いようなイメージがありますけど、簡単な料理は楽しさにつながると思うので、みんなに楽しくラクに料理してほしいっていつも思っています。

――そういう考え方だと、毎日の献立で悩みすぎることもなくなりそうです。

大皿で出して取り分けるのがフレンチ流

志麻さん:私も、レシピで料理を覚えてきたわけじゃなくて、感覚で覚えているんですよね。このくらいの厚さの肉だったらこのくらいの塩をふるとか、そういう感覚を身につけるためにも、本当はレシピから離れた方がいいんです。

分量で料理をしちゃうと、はかった時点で安心して「なんでだろう」とか考えないですよね。それで結果おいしくなかったらもうこのレシピは作らない、となってしまう。

「弱火で30分煮込む」といっても、家によって火力も違えば、鍋の大きさによっても変わってきます。

弱火で30分かければいいのかというと実はそうじゃなくて、ボコボコ湧いているのか、ゆらゆらしているのか、とか状態を見るのが大切。30分たってお肉が柔らかくなっていて煮汁が1/3くらいになっていればOK、とか。

30分という時間が重要じゃなくて、家によってはその状態になるまで20分かもしれないし、40分かもしれない。そういうことがわかってくると、何かがないときはこれでアレンジしようとかそういうこともできるし、料理が楽しくなってくるんです。五感で料理すると楽しいんですよ。

失敗も全然していいし、自分の感覚で料理をして失敗すれば「もっとここをこうしよう」ってなると思うんですよね。私なんて失敗だらけですよ。食べるのは自分と家族くらいなんだから、失敗を恐れずもっと料理を楽しんでほしいなって思います。