「いないところで話して…」恥じらいながら語られるお互いの印象
――お三方は15年間『銀魂』で一緒に演じられてきていますし、ほかの作品でも共演が多いかと思います。お互いに対してどのような印象をお持ちなのかお伺いしたいなと。
杉田 声優になる前から尊敬するおふたりです。子安さんは「憧れています」とは言いづらいダークヒーロー。親戚からは「あいつに近づくな」と言われるような……。
一同 (笑)。
杉田 こっそり近づいてみたら、みんなが教えてくれないような遊びを教えてくれる。そういう面が芝居に湧き出ているんですよ。
新人の頃にオーディションを受けたとき、「君は子安さんみたいになりたいの?」と聞かれたことがあって「え、あっ、はい!?」となったんです。
そのオーディションは落ちて、何がいけなかったのだろうかと考えていた矢先にその役が子安さんに決まったと聞きました。
放送された作品を観てオーディションの時の質問の意図がわかりましたよ。(子安さんの演じるキャラクターを)中学生くらいから観ていたので、自分の芝居の中に強く根付いていたんですね。
真に優れた人は概念化すると思っているのですが、それってすごいことだなと勝手に思っています。
こういう人と同じ現場で仕事をすると、ワクワク、エキサイトしてしまう。でも、それを本人へ見せるのは違うなと。真摯に演技した結果、それを子安さんが面白がってくれたらいいなと思っています。本人にはあまり言わないようにしていますが……。
子安 あははは。完全に知ってしまった(笑)。
杉田 お恥ずかしい……。
石田さんも同じようにとても尊敬しています。細かいところの配慮が素晴らしい。絶対に人が行き届かないところに優しさをふっと差し出せる方だと思っています。
『カトケン・サ・ン・バ!』の収録をするとき、石田さんが一人で曲を聴きながら出番を待っていて。「『カトケン・サ・ン・バ!』は女性だけで収録します」と言われた瞬間、「え!?」って言うんですよ。聴き込んできたんだなと思いました。
子安 ふふふ。
杉田 そういう細やかな経験値が重なってお芝居に出ている方なんです。
仲間内では「キャラクター名でも石田さんに名前を呼ばれたら上がるよね!」と話していたことがあって。僕は「彰~! 呼んでくれ~!」と思っています。
石田 (笑)。
杉田 僕は年下なので、先輩方の背中にタックルして胸も背中も借りていると思います。だけど、キャラクターとしては桂も高杉も銀時と同列の存在として演じなければなりません。それが逆に声優の面白いところだとも感じます。だからこそ、おふたりのお芝居に耳を傾けなければ、といつも考えています。
――子安さんは、杉田さん・石田さんの印象についてどうでしょうか。
子安 杉田くんはデビュー当時からよく知っていて『銀魂』以外の現場でもよく会うのですが、こと『銀魂』においては、主役を演じて座長として場をまとめてアフレコ現場の空気をつくるという大変なことをやっているから、そこは邪魔せずに助けてあげたいと思っていました。
ただ、そうは思っていても自分が演じる役が銀時に対してそういうことをする役でもないので、線引きが難しかったですね。
石田くんは同い年でデビューの時期も同じくらいなので、ずっと一緒にいた感覚があります。僕も石田くんも人見知りタイプだから人の輪の中心に入ることがなかなかできなくて。隅っこの方でふたりでお酒を飲みながら愚痴をこぼすという新人の頃の思い出があります(笑)。
石田 子安くんがそんな古いことを覚えていたとは……。あのときも今もそうだけど僕はお酒が飲めないから、飲んでいたのはお酒じゃないけどね。僕は(笑)。
子安 覚えていてくれた(笑)!
だから僕の中では石田彰は兄弟というか双子というか……そういうイメージが実はあって。彼がどう思うかは分からないですけど。
石田 生き別れの兄じゃないかな?
子安 同い年だっつーの(笑)!
石田 あははは。僕よりしっかりしているから(笑)。
子安 双子の兄ね!
杉田 (ふたりのやり取りを見ながら)これだよ、これ……!
子安 こういう感じで面白いんですよ。石田くん頑張っているな、僕も頑張ろう!と思える関係だと思っていますね。
――子安さんのお話を聞いて、石田さんはいかがですか?
石田 そんな風に思ってもらえていたんだな、と。口にされてしまってちょっと気恥ずかしさを感じています。僕のいないところで話してほしかったな(笑)。
子安 あははは。この質問がなければ言わないもんね(笑)。
杉田 (ふたりのやり取りを見ながら)これだよ、これ……!
石田 この質問をされたから答えるけど、言いたくはないよね(笑)。僕は卑屈な人間だし周りに対してすごくコンプレックスを持っている。同世代だからこそ、子安くんはああいう風にできるのに自分は……と思うことが多々ありましたね。
杉田くんは、「銀さんと言ったら杉田くんだろう」という揺るがない印象をつくり上げています。銀時として『銀魂』の中心に杉田くんが立っている。
主人公は当然のように番組の柱というポジションに立ちますけど、裏を返せばそのポジションから逃げられないんですよ。それをしっかり受け止めて15年間走り続けるのはすごいと思います。
僕は自分が中心に立つタイプでも立てるタイプでもない。そういうことから逃げてきているタイプなので、杉田くんが自分にない部分をしっかりつくり上げて持っているのを、本当にすごいことだと感じています。