6.史上最大級の全面協力の経緯は?
今回の『銀魂 THE FINAL』では、その制作において空知が全面協力。
映画では初となるティザーイラストの描き下ろしに始まって、また自身初の試みとなる原画4カットの描き下ろし、さらに入場者プレゼントでなぜか『鬼滅の刃』の「炭治郎&柱イラストカード」全10種類の描き下ろしといった試みまで!
加えて、TVシリーズ以来2度目となる声優出演も果たしている。
今回のこの全面協力が実現した経緯を聞いてみると、えっ? そういうこと!?
内藤 連載が終わって暇だろうということで(笑)。
本田 本当に暇してたの!?
内藤 普通、作家さんには連載が終わったあと「アニメのキャラデザしてください」とか「ゲームのキャラデザしてください」とか話が来るんですけど、空知さんのところには「ゴリラにならって鋼のメンタルを手に入れよう」みたいな本(『鋼のメンタルを手にいれる ゴリラ式メタ認知トレーニンク』)の表紙を描いてくださいという話しか来なくて(笑)。
井坂 唯一ね。唯一の仕事(笑)。
内藤 ただ、『銀魂』自体はこれで本当に終わっちゃうから、やはり最後に何か関わりたいとも言われていたので、「“原作・空知英秋”“作画・空知英秋”“声優・空知英秋”みたいな感じになったら面白いんじゃないですか?」と話していて。
それで全部いいですよということになったんですが、声優は一回しぶられて。
TVシリーズでも声の出演をしてもらったことがあって、「チーズ蒸しパンになりたい」っていうやつなんですけど(第内の『空知のひとりごと』の本人役)、あれが本当にイヤだったみたいですね(笑)。
それで今回も「このセリフだけなので声優をやってほしいんです」って頼んだんですが、「絶対なんかほかにもいろいろ言わせる気だろう!?」という押し合いはありました(笑)。
大西 収録が終わった後まで言ってましたもんね。「絶対これだけじゃないんですよね!?」って(笑)。
本田 それ、(ダチョウ倶楽部のお約束の)“押すな!押すな!”じゃないんですか? 本当はやりたかったんじゃないですか?(笑)
7.“終わる終わる詐欺”の裏側では……
2018年、TVシリーズの『銀ノ魂篇 後半戦』がクライマックスを迎え、実写映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』公開で盛り上がる中、8月20日発売の『週刊少年ジャンプ』38号で発表されたのが、あと5回で最終回を迎えるという告知。
これが大きなニュースとなった中で、その最終回となる42号で「やっぱり終われなかったァァァ!!」の叫びとともに空知からの謝罪文と、『ジャンプGIGA』への移籍を発表。
しかしそちらでも最終回を謳いながらやはり閉められず、さらに『銀魂公式アプリ』に媒体を移して2019年6月17日配信でついに終わるはずだったのが、配信日が延期されることに。
そして6月20日配信の704話『天然パーマにロクな奴はいない』でようやく完結を迎えることとなった。ネットでは“終わる終わる詐欺”とも言われた完結をめぐる動きの裏側で編集者たちは!?
本田 井坂、本誌の最終回の近辺で、近藤勲が出てきた瞬間に「終わるつもりねぇな、この人」って言ってたよね?。
井坂 ゴリラ(=バブルス女王)と近藤の結婚式を始めたときに、「コイツ、終わらせる気ねぇじゃん!」って。実際、終わらなくて、テニプリの歌を歌ってたから(※最終回の予定回で『テニスの王子様』のパロディを展開)、“頭おかしいのかな!?”って思いました(笑)。
すぐSQ(『新・テニスの王子様』連載の『ジャンプスクエア』)に電話して、許斐剛先生の担当にいいですかって確認取ったりした記憶が(笑)。終わらないってことで、ずっと大西さんとどうしましょうかって話してましたね。
真鍋 僕が担当のときに「本誌で何月に終わります」みたいなことを決めたはずだったんですよね。そのくらいで井坂さんに交替して、案の定終わらなくて。僕はもうそこから全部ぶん投げた感じです。
8.あらためて語る『銀魂』の魅力
ギャグを見ていってもバリエーションは多種多様で、アクションに人間ドラマと、さまざまにファンの間でも業界内でも語られてきた『銀魂』という作品の魅力。
では、その作品作りにも携わって、一番近いところで裏も表も見てきた編集者たちにとって、あらためて『銀魂』の魅力とは? そこにはやはり担当だったからこそ語れる表現と逸話が!
齊藤 とにかく似てる漫画がほかにないってことだと思いますけどね。オンリーワン感がすごい!
井坂 “俺たちの『銀魂』”感ですかね。遠くへいかない。汚いことやるし、ふざけているし、売れ過ぎないし(笑)。
『ONE PIECE』とか『鬼滅の刃』くらいになると“みんなの『銀魂』”になっちゃう。『銀魂』は「俺は分かってるんだよ」っていう感じがファンにとってあるんじゃないですか。トガッてる分、理解できるとめちゃめちゃ楽しいっていう。
大西 高級フランス料理っていうよりは、くさやみたいなね。
井坂 好きな人はめっちゃ好きっていう。
本田 もう手放せなくなっちゃう。
齊藤 全然おしゃれじゃないんだけど、すごいマニアがいるみたいな。
井坂 (ラーメン)二郎です、二郎(笑)。
本田 僕はあれですね、『銀魂』は生き急いでるところがすごいオンリーワンというか、今この瞬間、死んでもいいと思いながら毎週・毎ゴマやってる感じがするじゃないですか。
バトルでも真面目な展開でもギャグでも。今この瞬間、打ち切りになってもいいという気持ちでやっている感じに、ほかの漫画では味わえないゾクゾク感があるので。それはアニメーションにもありますよね。
齊藤 そのくせ、結婚式に何ページも使ってペースを崩さないみたいな。誰がどう考えても、今これにページ使ってる場合じゃないんですよっていう(笑)。
本田 思いついちゃったらそれを骨までしゃぶり尽くさないと、2度とそれに手を出せなくなっちゃうから、しゃぶり尽くしてから手放すんだっていつも空知さんおっしゃってましたね。
松尾 銀魂だったらなんでもありっていうふうな前例を作ったのはすごいなと思っていて。僕が担当しているときに「これ、誰に許可取ればいいんだろう?」と思う案件もあったりして(笑)。
今回の映画の描き下ろし「炭治郎&柱イラストカード」もそうで、『銀魂』やってくれたなっていうふうに、アメーバのように周りを取り込んで全部銀魂にしちゃうっていうところが銀魂らしいなって思いますね。
9.気になる続編の可能性と新作の展望は!?
果たして本当に終わりなのかということ含めて、気になるのが続編と、新たなる作品。もうそのあたりについてもズバッと聞いてみた。
内藤 まったくわかりません。もし新作があるとしたら、ジャンプの目次コメントで空知さんがご自分の言葉で帰還を報告されると思うので、それを待っていただければいいんじゃないかなと思います。
大西 続編はないと思いますよ。分からないけれど、作家が何十年か後にお金がまったくなくなったらなんか……。
松尾 『銀魂2』みたいな!?
大西 『帰ってきた銀さん』みたいな(笑)。
本田 今回の映画を観たら、これ以上はもうないですよね。みんなの心の中で銀は生き続けるんですよ!
10. 『銀魂 THE FINAL』を編集者たちはこう観た!!
最後に語ってもらったのが、まさに『銀魂』の集大成となる今回の作品について。
編集者たちは、映画『銀魂 THE FINAL』を観て何を感じたのか。この座談会についても最後の最後まで、『銀魂』の担当陣らしさ全開です……。
内藤 もちろんマンガで1回読んでいるんですけど、15年くらいやった作品の最後だったというのもあるし、そこに声優さんたちの演技や動きが加わって、関わってきた人間としてはグッと来る感じではあって。僕は号泣しましたけど……そうでもなかったですか!?
本田 井坂はどうだった? 内容は井坂が担当してたときのものだもんね?
井坂 僕は観ながら、「このとき14時間くらい待ったな」とか、「このとき(TVシリーズで監督、今回の映画で脚本・監督も務める)宮脇(千鶴)さんにこう言われたな」とか。
「井坂さん、こんなの2時間の尺に入るわけないでしょ!」「大丈夫です、要らないところいっぱいあるんで摘まんでください!!」というやりとりを思い出して……ちょっと涙が出てきましたね(笑)。
真鍋 僕もうるっときたんですけど、どっちかって言うと井坂さんと同じで担当当時の、主にアニメスタッフとのやりとりを思い出して、申し訳なさというか。
関わってくれたすべての人たちに本当にごめんなさいっていう気持ちで観てましたね(笑)。
松尾 『銀魂』ってこんなに殺陣シーンが多かったっけ?って思ったんですけど、見応えがありましたね。2時間、あっという間だなという感じがしましたね。
齊藤 あっ、最後はこういう話だったんだっていう(笑)。僕、本誌の校了(編集作業)で何年か掛けて読んでいて、それをキュッとしてくれたことでようやく全体像が分かるっていう。そういう意味ではきれいな映画だなと思いましたね。
本田 本誌で読んでるときは載ってる媒体がどんどん変わっていって、19ページが40何ページになったりもするから、頭がすごくこんがらがったんですけど、映画で観て初めて『銀魂』ってこういう終わり方をしたんだって知りました(笑)。良かったですね。
井坂 知らなったんですか!(笑)
真鍋 『銀魂』を少しでも好きだった人が観るとやっぱりグッと来ますよね。
大西 僕は、漫画の最後のほうはそんなに真剣に読んでなかったんですけど(笑)、うまく映画でまとめてくれていて、流石にグッと来ましたね。
本田 『銀魂』の本当の最終回は映画だったんですね…。
大西 原作を途中までしか読んでなかった人でも、楽しめる作りになっていたと思います!
映画『銀魂 THE FINAL』大ヒット公開中
■原作:空知英秋(集英社ジャンプコミックス刊)■監督/脚本:宮脇千鶴 ■監修:藤田陽一
■声の出演:杉田智和、阪口大助、釘宮理恵 ほか ■アニメーション制作:BN Pictures
■配給:ワーナー・ブラザース映画 ©空知英秋/劇場版銀魂製作委員会