自分たちのリアルな「あの頃。」を振り返って

(左)仲野太賀 (右)松坂桃李 撮影/木村直軌

――私はこの映画を見た後に、苦笑いしながら胸が痛くなりました。仲間たちと若さに任せて滅茶苦茶な行動が出来た、自分が何者か分からない同士で笑い合えた、私の「あの頃。」を思い出してしまったんです。お2人のそれぞれの「あの頃。」の思い出があれば、教えてください。

松坂 今、思い出すと学生時代は、色々なことがあって青春だったなとしか……。この映画絡みで言えば、僕は松浦亜弥さんと同じ中学校に通っていたんですね。

僕が1年生のときに、彼女が3年生で。僕の中では「同じ中学校に松浦亜弥がいたんだぜ!」って誇れるくらいの思い出で。

――まだ何者でもなかった松坂少年の、青春の1ページ。

松坂 「Yeah!めっちゃホリディ」が流れていた頃で、毎日のようにサインくださいとかあって。僕はその時は何も考えず、「これが芸能人か、キラキラしているなあ~」って思っていました。その自分がまさか、先輩のファンの役を演じるとは、運命的なものを感じますね。

――仲野さんは若い年齢で事務所に入っていますが、気恥ずかしくなるような「あの頃。」はありましたか?

仲野 もちろん、気恥ずかしくなることを高校時代は平気でやっていましたね。僕は部活もやらずにいつも友達と一緒にいたんですが、その頃なぜか胴上げが仲間内で流行っていて。

――胴上げ!?

仲野 渋谷のセンター街とかで、意味もなく胴上げし合うんですよ。それが楽しくて楽しくて。でもある日、友達に胴上げされているときに、事務所のマネージャーが通りすがって、バッチリ目が合ってしまいました。

「え? 仲野くん?」って口をあんぐり開けていらっしゃいましたね。後日、事務所に呼ばれたら、案の定胴上げ禁止令が(笑)

――無駄なパワーがあふれて仕方なかったことが、伝わるエピソードです。

仲野 10代の僕の事務所での印象は、何しでかすか分からないから、悪かったと思います。もう今は胴上げをしたくてもできないですけど(笑)

(左)仲野太賀 (右)松坂桃李 撮影/木村直軌

――ちょっとシリアスな話になってしまうのですが。新型コロナウィルスの流行で、約1年も大きなリスクとストレスを皆で抱えている今、「エンターティメントの力」についても、この映画を見ながら考えてしまいました。

仲野 僕自身、発信している側だけど、受け取っている自分も確かにいます。僕はエンタメの力強さに、コロナ自粛期間中に本当に救われました。

ネットフリックスを見たり、これまで撮った作品を見返したり、音楽を聴いたり。それだけで毎日の気持ちが晴れました。

――ツルギ青年が、コズミンが、人生を充実させて行動するのも、アイドル=エンタメの持つ力なんですよね。自粛期間中、それをすごくリアルに感じられました。

仲野 ものすごいファン活動をしない人でも、嫌なことがあったらエンタメの力を借りて「よし、明日も頑張っていこう」って気持ちになれるし、自分の逃げ場じゃないけど、助けになってくれる。

だから、派手に見えるけど実はいいことばかりじゃないこの役者という仕事も、捨てたものではないと、自粛期間中に思えました。モノづくりをする人間として、責任をもって面白いもの、素敵なものを作れるようになりたいです。

松坂桃李 撮影/木村直軌

――この映画は、コロナ前に撮影したんですよね?

松坂 まだ「コロナで仕事ができなくなるかも」という状態ですらなかった。だから今までの撮影の空気感の中で演じられたので、結果として撮影そのものが「あの頃。」みたいな感じになってしまいました。

――コロナで改めて見つかったこともあれば、戻れない日々も自覚させられて、なんだかこの映画そのもののようで切ないです。お2人とも、今日は貴重なお話をありがとうございました!

仲野太賀 撮影/木村直軌

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東京都出身。大学在学中にライターとなり、広告制作会社勤務、2年の海外生活などを挟みつつキャリアは20年以上。暮らしに関わるお金情報、書籍紹介・著者インタビュー、芸能インタビュー、ビジネス一般など幅広いジャンルでお仕事しています。現在、グアムと日本を行き来する生活です。