作家・角田光代によれば、「パン界の人という人種がいる」という。おいしいパンを求めてどこへでも出かける人を「パン界の人」と呼ぶのだそうな(堀江敏幸・角田光代共著『私的読書禄』)。
この時期にわざわざ横浜までパンを買いに行く千葉県民の私もパン界の人なんだろうなあ、きっと。でも、不要不急ではないのだ。なぜなら今日3月8日、「横浜高島屋」の地下1階にベーカリースクエアがプレオープンするんです。
横浜や都内で人気の約40のパン屋が出店し、500種類以上のパンが並んでいるんだって。
以前、ウレぴあ総研の【パン職人が小麦を語る】で取材させてもらった横浜の「ブラフベーカリー」や、代々木八幡の「365日」のオーナーシェフ杉窪章匡さんが昨年三軒茶屋に開業した「ジュウニブンベーカリー」も出店するらしい。
もう行くしかないでしょ。期待を胸に横浜へ急いだ。
「ベーカリースクエア」パン好きが行くべき魅力は?
パン界の私を待ち受けていたのは、約400平方メートルの巨大なパン売場だった。
とにかく広い。右を見てもパン。左を見てもパン。前もうしろもパン。上を見てもパン(ウソです)。どこもかしこもパンだらけ。
ブラフベーカリーを発見。あいにくオーナーシェフ栄徳剛さんは不在だったが、おいしそうなパンが、おいでおいでしています。「ジュウニブンベーカリー」もありました。
その他、地元横浜の「ボンヴィボン」や台東区柳橋の「シゲルキッチン」、代々木の「ファーロ」、代官山の「メゾン・イチ」、「サンジェルマン」も入っています。
横浜高島屋にしかない「カナガワ ベーカーズ ドック」というコーナーもあります。
おいしそうなパンを物色していたら、パン界の人というよりも「パン界の重鎮」と遭遇。【パン職人が小麦を語る】で取材させてもらったパンライターの池田浩明さんです。
池田さんにベーカリースクエアの特徴や魅力について伺いました。
「いまもっとも勢いがあるブランドが出店していますね。しかも百貨店初出店の店が多く、話題性もあります。また、いい意味で百貨店っぽくない売場だなあって思いました」
百貨店っぽくない売場ってどういう意味?
「百貨店ではなく、店側が什器を用意したことで、店の個性や特徴を出した売場になっています。ここに来れば、それぞれのパン屋に足を運んだ感覚に近い体験ができます」
あいにくこの日は雨だったが、横浜駅から雨に濡れずにパンを買いに来れるのも魅力だと池田さんは話してくれた。
パン界の重鎮によれば、昨今百貨店でのパン需要が急速に伸びているといいます。そのため百貨店が人気パン屋を取り合う状況が続いているそうです。
モテるのは嬉しいけど、パン屋が百貨店でパンを売るのは、「かなりハードルが高い」と池田さんはいいます。なぜならマージンが発生するし、人を出すと人件費がかかるから。
ブランド力や生産力があるパン屋ならば、マージンや人件費をやりくりし、百貨店内にブース を持つことができる。
「でも、個人店の多くは、パンを百貨店に並べるのは至難の業」
そうだよなあ、わかるわかる。思わず納得。
「ところが、ベーカリースクエアには、街のパン屋が焼いた個性的なパンが並んでいます。それが『カナガワ ベーカーズ ドック』なんです」
神奈川県下にあるパン屋約30軒のパンが日替わりで登場し、計約200種類のパンが集結。地
元神奈川生まれのパンの決起集会とでもいうべきコーナーなのだ。
「カナガワ ベーカーズ ドックは画期的です。パン好きにとっても、ここに来ればいろいろなパン屋のパンを買えるメリットもあります。このコーナーの先行きを見守っていきたいですね」
池田さん、ありがとうございました。
ベーカリースクエアの魅力がわかったところで、ここで出会ったパンのなかから、とくにインパクトがあり、「おいしい」と思ったパンを独断と偏見で紹介します。