日比野設計 日比野さん ©日比野設計

日比野設計・日比野さんにインタビュー

新しい試みを取り入れる保育園「KIDS SMILE LABO」をつくった日比野設計の日比野さんにお話を伺いました。

ーーなぜこのような保育園をつくろうと思ったのでしょうか

日比野さん(以下、日比野)「これまでに540を超える施設を国内で、そして国外では20を超える施設を作り、多くの子育てやさまざまな園の保育や教育についての考え方の部分にも深く関わってきました。

その中で、どんなに理想的な施設を作っても、施設や建物などのハード面だけでは理想の保育園にはならないことを感じてきました。

現代日本の子育てを取り巻く社会環境からすれば、できるだけトラブルを避けるような保育とならざるをえないため、結果的に子ども達が存分に遊んだり学んだりすることができないのではないかと考えています。

こうした事を改善するには、安全面などには十分に配慮しながらも、子どもたちが思いっきり学び遊べるよう、施設を上手に活かした保育ができる環境を自前で作るしかないと思ったのが保育園設立の理由です」

ーーKIDS SMILE LABOの園内のグリーンや段差などのアイデアは、どのように生まれたのでしょうか

©日比野設計

日比野「子ども達に必要であるにも関わらず、不足しているものを考えました。

例えば、ビル型保育所のほとんどには緑がありません。植物の生育に適した環境でないということは、子ども達の成育にも適していないとも言えると思います。

まずは植物が生育しやすい環境を作り、実際に子ども達が見たり触れたりする環境を作る事で、そこにはさまざまな学びや気づきが生まれていきます。

植物が枯れるには理由があり、成長するのも理由がある訳で、すべてが教育に繋がっていくと思います。

園内に段差をたくさん設けた事も同じです。保育園の大半は「子どもが怪我をするから」という理由により、できるだけ段差を無くす傾向にあります。

自然豊かな園庭がある環境の園であれば、外遊びで解決する事ができますが、ビル型保育所ではビル内で解決する必要があります。

そこで、私達は園内にたくさんの段差を設け、日常的な活動の中で自然に身体を動かすきっかけを作るようにしました」

ーー園の中にあるもので、こだわっている点やものはありますか?

©日比野設計

日比野「使われる建材や、おもちゃ、食器などは極力天然素材の物を使っています。特に子ども達が手に触れる可能性のある物は、手触り感や匂いを感じる事で子ども達の感覚に訴える事を意図しています。

それらは一般的な保育園では「メンテナンスが大変」という理由で避けられることも多いのですが、「KIDS SMILE LABO」では子ども達のためにあえて使っていますね。

さらに園内には、100%天然の果実や植物から採取した香料のアロマシステムを取り入れています。季節や場所に応じて香りを変えることでビル型保育所が感じにくい季節感を演出する事も意識しています」

ーーKIDS SMILE LABOを設計・開園するにあたって、楽しかった、やりがいを感じたことはありますか?

日比野「とにかくゼロから保育園を企画し、園長を決め、副園長を決め、二年をかけて一つずつ作ってきました。

作る過程においてたくさんの時間と経費もかかりましたが、子どもや育児に関わるお母さんやお父さんのためにという想いは私達にとっての強い持ちモチベーションとなりました。

通常のプロジェクトでは「危ないから」という理由で却下されるような提案も、私達は運営からカバーできることで「それ面白いからやろう!」というスタンスで進められた事はとても面白かったです」

ーー今後、どのような園にしていきたいですか

日比野「保育園は地域のご家庭を対象にしていますので、まずはKIDS SMILE LABOがある神奈川県の厚木市や近郊の子育て支援に繋がるために活動をしたいと思っています。

と同時に、私達の活動や理念を外部に発信し、子どもたちのためにこんなこともできる、という新たな保育の形を国内外の保育や教育に関わる人達にも伝えていきたいです。

保育園「KIDS SMILE LABO」は、保育園としての機能だけではなく、子育てを軸としたさまざまな情報発信の場であるようになっていく予定です。

そして、子育て中のお母さん、お父さん、保育や教育の関係者、子供に関する研究や仕事をしている人達にとって頼れる場所を目指していきますので、是非ご期待ください!」

子どもも大人も育つ場所「KIDS SMILE LABO」

洞穴アトリエ ©日比野設計

現在、「KIDS SMILE LABO」では子どもの一時預かりも募集しているそうです。

園は本厚木駅前にありますので、お買い物や美容院など、お出かけの時にちょっと預かって欲しいという場合は、お問合せしてみてくださいね。

ビルの中の保育施設でありながらも、緑豊か。たくさんの段差や壁面黒板に鏡など、「KIDS SMILE LABO」には、子どもたちの好奇心ややりたい気持ちを刺激する工夫が施された場所がたくさんあります。

さらに、“⼤⼈の「やってみたい」も叶えられる場所”でもあり、園名にLABOと名付けている通り、子ども達にとって有益になることの調査研究をする場所なのだといいます。

“子ども達のため”にという意思のある調査研究や商品開発であれば、共同研究や共同開発の相談も可能だそうですよ。

「KIDS SMILE LABO」は、子どもと大人が一緒になって、たくさんの経験をし、考え、成長できる場所。1日のうちの多くの時間を過ごす場所だから、子どもたちにとって心地よく、楽しく、失敗も成功も体験できる、そんな理想を叶えてくれる。

ただ子どもを預ける場所ではない、新しい保育園。「KIDS SMILE LABO」のこれからの進化にも注目です!

KIDS SMILE LABO
住所:〒243-0014 神奈川県厚木市旭町1-7-3 2F
TEL:046-215-2532
FAX:046-215-2533

園児
6ヶ月~5歳児
各学年6~7名 定員40名

保育時間
基本時間 : 7:30 - 18:30
延長保育時間 : 18:31 - 19:30
登園時間帯 : 7:30 - 9:00
降園時間帯 : 14:30 - 19:30

一時預かり
月曜日~金曜日 7:30-18:00
6か月~未就学児

休園
日曜日・祝祭日・年末年始

【取材協力・画像提供】日比野設計

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスモノ書き。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、絵本、コドモ、ヘンテコなもの。座右の銘は「明日地球がなくなるかもしれないから、今すぐ食べる」。木漏れ日の下で読書と昼寝をする生活と絵本に携わることを夢見て、日々生きています。