「長道とつむぎは心で会話している」(洲崎)

洲崎綾 撮影:友野雄

―― おふたりは完成した映像はすでにご覧になられましたか?

洲崎 私は初号試写で見ました! 逢坂くんは試写会行けた?

逢坂 僕は試写会に行けなくて、つい先日完成したデータをもらって見せてもらいました。まだ映画館の音響で見られていないので、映画館で見るのを楽しみにしています。

洲崎 私が行ったときツトム(原作者、弐瓶勉)も来ていて、上映終了後に「泣いた?」って聞いたら絶対に泣いた目をしながら「泣いてないっすよ。花粉症で……」とか言っていた(笑)。

逢坂 あはははは(笑)。

――『シドニアの騎士』はSFアクションやラブコメなど色々な要素が満載ですが、おふたりは『あいつむぐほし』をご覧になられてどのシーンがお気に入りでしたか?

逢坂 僕は「戦闘シーン」ですね。『シドニア』は戦闘シーンを含めて、今どういう展開になっているんだろうと感じるほどスピード感のある作品だと思っています。

それは台本を読むだけでは分からないので、完成した映像を見たときは毎回「すごい!」と思わされますし、同時に演じられて良かったとも感じます。

一方で、あそこまでクオリティ高く完成されているのを見ると自分の芝居に対して「ここもうちょっとできたかも……」と思う部分もあって。

――なるほど。プレスコだと声のお芝居で絵が決まる部分もあるからということですね。

逢坂 とはいえ、そう思うとキリがないので心に仕舞っていますけれど。逆に僕らの芝居でスタッフのみなさんに少しでも気合いが入って、あそこまでクオリティ高いシーンが完成したと思うようにしています(笑)。

そんな中で僕が今回特に気に入っているのが、最後の戦いでの岐神(海苔夫、CV:櫻井孝宏)と長道のシーン。これまで複雑だった岐神と長道の関係性を考えたら、すごく来るものがありました。

洲崎 あのシーンは海苔夫、主人公じゃん!と思いました(笑)。

逢坂 そうだね。劇場版は長道だけじゃなくて岐神と稲汰郎の3人が主人公だと思っています。

洲崎 うん。本当にどのキャラクターもすごく活躍していて見せ場がありましたからね。

逢坂良太 撮影:友野雄

――そんな洲崎さんのお気に入りのシーンはいかがでしょう?

洲崎 私はやっぱり「長道とつむぎのシーン」がすごく好きです。居住塔の上空を長道に連れられて一緒に飛んでいるシーンがあるんですけど、普段は戦闘で宇宙を飛び回っているつむぎが等身大の女の子に戻って「怖い!」となっていて。それがすごくかわいいなと思いました。

――本作のキャッチコピー「身長差15メートルの恋」と書かれているように、種族の異なる者同士の恋に葛藤するつむぎの姿が印象的でした。

逢坂 長道は全く気にしていなくて、なんでそんなに気にしているの?と思っていますけどね(笑)。

そもそもシドニアの中には色んな人たちが住んでいるので、大きかろうが小さかろうが種族が異なろうが関係なくて、「たまたま好きになった相手が融合個体だっただけ」と。

洲崎 お互い普通とは少し違うからこそ共感できる部分もふたりはあって。葛藤はしているけど、ちゃんと心で会話している感じはすごくしました。

逢坂 長道が成長したというのも大きいかもしれません。前の長道ならつむぎが落ち込んでいたり悩んでいたりしても「なんて声をかければいいんだろう…」という感じでしたけど、10年経って自分の気持ちをしっかり伝えられる人間に成長しているから、つむぎを常に心配して寄り添っている。そういった部分でも大人になったと感じます。

『シドニアの騎士 あいつむぐほし』 © 弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

「変わらない良さがある。一緒にお芝居しやすい」(逢坂)

――逢坂さん、洲崎さんは2014年のTVアニメから約7年間『シドニアの騎士』で共演されていますが、この月日の中でお互いのお芝居にどのような印象をお持ちですか?

洲崎 逢坂くんのすごいところはどんな役にもすっと馴染むところだと思います。正直、逢坂くんが出演しているアニメが流れていても、逢坂くんの声だと気づけないことが多いんですよ(笑)。

逢坂くんだ!とならずに、キャラクターとしてすっと声が入ってくる。それくらいお芝居がすごくナチュラルですごく自由で、稀有な人だと思っていて。

キャラクターによって声が全く違うとかではないのに、違うように聞こえるって本当にすごいことだなと。とても尊敬しています。

――軸を持ちながらも幅の広さがあるということですね。

洲崎 一度逢坂くん本人にそれを伝えたことがあって、その時は「逆に自分の声だとすぐに分かってもらえる方が羨ましい」とか「女の子の方が声が色々変えられていいな」とか言っていましたけど。いやいやでも!って私は思っています(笑)。

――長道を演じられているときも、そういった側面は感じられますか?

洲崎 感じます。全く擦れていない純朴な素直な長道に逢坂くんの声がぴったりハマっていて、すごくいいなぁと思っています。

――逢坂さんは洲崎さんのお芝居についていかがでしょうか?

逢坂 変わらない良さがあると思っています。歳を重ねて成長していくと声の雰囲気が変わったなと感じることって結構あるのに、それをいい意味であまり感じさせない良さがあって。

もちろん本人の中では変化している部分は確実にあるでしょうけど、その中で10年経ってもあまり変化のないつむぎを演じることはとても大変だと思うんです。

でも、その大変さを感じさせないくらいスパっと迷わずに以前と同じように声を出してくれるので、僕としても一緒にお芝居がしやすいと感じます。

洲崎綾、逢坂良太 撮影:友野雄

――洲崎さんはTVアニメ1期では星白閑、2期以降ではつむぎ、同じ要素と異なる性格を持ち合わせたキャラクターを演じられています。この二人のキャラクターのお芝居についてはどのような印象をお持ちでしょうか?

逢坂 星白とつむぎの違いって精神年齢だと思っていて。星白は精神年齢が高めで穏やかでたまに女の子らしさが出てくるようなキャラクター。

一方、つむぎの精神年齢は極端に言うと小学生くらい(笑)。戦闘に関しての知識が備わっているのでそれを駆使できる強さはありますけど、そういった点を除けばまだまだ幼い天真爛漫な女の子なので。

声は同じだけど精神年齢の異なる人物だと感じさせてくれるのはすごいなと思います。