もうすぐ二十歳。10代に心残りはない

撮影:稲澤朝博

――細田さんは常に自分に足りないものについて考えているそうですが、本作を通して、自分に足りなかったもので、何か得たものはありますか?

萌歌ちゃんを見ていて、役に対する向き合い方や責任みたいなものが、自分には足りていなかったのかな、と思いました。当時の自分としては100%でやっていたつもりなんですけど、今、振り返ると本当にちゃんとできていたのかな? 向き合えていたのかな?という疑問が残るんです。

だから、しっかり役に対して向き合わなくてはいけない、ということを、この作品があったからこそ吸収できたと思います。

撮影中は、(上白石が)体を張って、ちゃんと役と向き合っていることを、頭で理解するというより、肌で感じていたんですけど、それが、完成作を観たときに、ようやく頭でも理解できた感じがしました。

僕、自分が出ている作品を観るときは、作品自体に集中しようと思っても、どうしても自分に視線が行ってしまって、反省ばかりになってしまうんです。でも今回は、そんな中でも(上白石の本作に対する)スタンスのようなものに気づきました。

――ことしの12月で二十歳を迎えますが、子供のうちにやっておきたいことはありますか?

10代のうちにやっておきたいことで、車の免許を取るというのがあったんですけど、それもこの間できたので、今は特に心残りはないです。逆に10代だからこそできることって何だろう?って考えます。でも、それに気付くのって、きっと30、40歳と年齢を重ねてからだとも思うんですよね。

©2020「子供はわかってあげない」製作委員会 ©田島列島/講談社

――細田さん自身は、大人と子供の境界線はどこにあると思いますか?

正しいわがままが言えるか、普通のわがままになるか、というところですかね。大人になると、自分の思っていることが言えないとか、思っていても堪えなくてはいけない瞬間って、間違いなく子供のときよりも多くなると思うんです。

子供は何でも素直な反応をするからケンカになりやすいけど、大人になるとそういうことを知っていくから衝突を避けられるようにもなる。ただ、だからと言って、全部堪えることが良いことだ、とは、僕は思っていなくて。絶対に自分が正しい、と思うことは、言うべきだと思うんです。たとえそれが周囲からはわがままと捉えられることがあっても、そこに一本軸があれば。

だから、理由があるわがままを言えるのが大人で、駄々をこねるとか、理由のないわがままを言うのが子供なのかな、と思います。

――自分が大人だな、とか、逆に子供だな、と思うのはどんな瞬間ですか?

子供だなって思うところしかないですけど(笑)。それこそ、感情が顔に出やすいし、思ったことはすぐに口にしてしまうし。

周りからはわりと「大人だね」と言われることは多いんですけど、自分では実感できていないです。どこを見て「大人だね」って、言ってくださっているんだろう?と。まだまだ中身は全然子供です。