セックスの話は早くて小学校高学年から
ーーセックスの話は中学生ぐらいからですか?
そうですね。早くて小学校の高学年ぐらいです。
セックスの話をするにはもうひとつ大きな壁があります。つまり、精子と卵子の合体の話をしないといけません。
子どもが聞いてくるセックスの話は「どうやって僕らは出来たの?」なんです。
子どもの性に関する質問は、少なくとも初経、精通までは命の成り立ち、誕生に関わる質問です。
それを大人たちがちゃんと納得していればいいのですが「セックスの話はいやらしい話」と親の方が思ってしまうのが問題です。
そうではなく、子どもが質問をしているのは命に関することだと考えて下さい。だから精子と卵子がどうやって合体するかを親がきちんと理解していればいいんです。
その為には「体外受精」と「体内受精」の生き物の話をするのが一番分かりやすいと思います。体外で受精する動物はいっぱい居ますが、魚を例に挙げるといいです。
何故、体外で受精出来るかというと水があるからです。水があるから産卵しても卵が死なず、雌が産卵し、そこに雄が放精することで、何千何万の受精卵が出来ます。
陸上で生きる哺乳動物になってくると外に卵子や精子を出すと水がないから干上がって死んでしまいます。
そこで哺乳類は長い年月をかけた進化によって性器という器官を身につけ、身体の中で受精する方法を生み出しました。
そうしないと哺乳類、人間は陸上で生き残ることが出来なかったんです。だから哺乳類は空気に触れさせないように雌の体内の卵子の近くに精子を送り込むために雄は自分の性器を雌の体内に入れて射精します。
そうすることで受精させ、子孫を残してきたんです。こんなふうに生物の進化と結び付けてセックスの話が出来たらいいですね。
日本の場合、性教育は道徳教育の傾向が強いのですが、ヨーロッパの性教育は基本的には生物科で扱います。ヒューマンリレーション(人間関係)の科目で扱う国もあります。
ーー「男の子には男の人が、女の子には女の人が教えるのが良い」と仰っていますが、性別で分けた方がいいと思う理由はなんですか。
「月経がつらい」などは男にはなかなかわからないし、「男の子の性の悩み」をお母さんが理解することは身体の作りも違うので不可能です。
そういった不安や悩みに対応するには、同性の年長者がより相応しいと思うからです。
傍に同性の人が居ない場合は本を買って与えるとか、信頼できる同性の年長者に話をしてもらうなどした方がいいと思っています。
夫婦の関係が子どものジェンダー意識を育てる
ーー夫婦関係においても子どもに性被害を与えない為にしておくべきことはありますか?
子どもたちが両親の関係を見ていて、そこに支配や命令を日常的に感じていればやっぱり「女は黙っていないといけない」と思ってしまいます。夫婦の関係は子どもにとってある意味男女関係のモデルになっているのだと。
ーー小さい頃に「嫌だ」という言葉をちゃんと言えるように教えておかないと、何かの犯罪に巻き込まれたり、男女間での性に関する誤解も生まれる可能性があるということですね。
子どもには親や教師、年長者が言ったことに「うん(Yes)」と言う子が良い子、「NO」と言う子は悪い子という刷り込みがあります。
「子どもの為に言っているんだから親の言葉を聞きなさい」というのを親たちはどこかで信じ込んでいます。そして言う通りにしないと怒る、だから子供には「NO」という習慣があまりないんです。どちらかというと「うん」と言った方が親は喜ぶから。だからこそ親子関係の中でも嫌なら「NO」と言っていいという訓練をして欲しいんです。痴漢の被害も人が居ると「やめて」となかなか言えないですよね。「嫌」と言っていいというトレーニングは必要です。
ーー性について親が伝えないといけない理由とはなんでしょうか。
日本の性教育がヨーロッパなどと比べて30年ほど遅れているというのもありますが、何よりも学校では「不幸せにならない為の性教育」が大事だと考えられているように思います。
例えば「避妊しても失敗するからセックスするな」とか「中絶は殺人のようなものだ」とか、そういうやり方は子どもの心には届きません。
そうではなく「どうしたら幸せに生きられるのか?」その為の性教育というように考え方を根本的に切り替えないといけないと思っています。
幸せな人生を生きていく為には科学的に正しく性について学び、「自分の命や身体を大事に」と同時に「相手の命や身体も大事に」と気付いて欲しいんです。
身体や性器は良きものである。傷つきやすいけれども素敵なものであるという認識を持って欲しいんです。
例えば、今はサニタリーボックスという名前に変わりましたが、昔は「汚物入れ」と言っていましたよね。
分泌物が汚いものであるなら、性器も汚いものになってしまい、隠すもの、恥ずべきものになってしまいます。それは男性も同じで、性に関することを不潔や汚らしいという言い方を辞めて欲しいんです。
不潔や汚らわしいという言葉それら全てが子供たちの性意識、性関係、性生活に響いてくるんです。隠すべき話ではないと知って欲しいんです。
そして親は身体の仕組み、働きをきちんと勉強して子どもに「命や身体を大事に、性器は汚いものではなく良きものである」ということを正しく伝えて欲しいです。
取材協力:村瀬幸浩氏 共著 『おうち性教育はじめます』(KADOKAWA) 他多数
親や友人にも言えない悩みを聞いてくれる子どもの為の相談窓口
せたがやチャイルドライン
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