デザインフェスタギャラリー原宿にて、日本やアジアの一風……いや、かなり変わったお寺ばかり紹介しているサイト「珍寺大道場」を運営する小嶋独観さんの写真展『奉納百景』が行われた。

独観さんが今回注目したのは「奉納」されたもの。檀家さんや信者さんといった参拝客からの、溢れんばかりの熱すぎる想いの詰まった『奉納物』にスポットを当てた、新しい試みの企画だ。

人の気持ちが込められた『奉納』

……なぜ、奉納に注目したのか? これまで撮りためた奉納物は200を超えるという。今回はその中から厳選されたおよそ60点が展示されていた。

独観さんが『奉納』に惹かれ始めるきっかけとなったのが、山形県の小松沢観音。最上三十三観音霊場20番札所であるこの霊場のお堂は、札で埋め尽くされていたという。

壁が見えなくなるほどのおびただしい数のお札に巡礼者の熱気を感じた。さらに、その札の上に多数掲げられるムカサリ絵馬(独身で亡くなった方の架空の婚儀の様子を描き供養するもの)で、死者への深い思いとそれを許すお寺の寛容さにも関心を持ったそうだ。

お寺がこの壁にお札を貼ってくれと呼びかけたわけではない。にもかかわらず勝手に貼り続けてしまうほどの強すぎる思いが交錯するその堂内は、信心や家族愛を通り越してもはやカオスでしかなかったのだろう。それらは独観さんが撮影した1枚の写真から十分すぎるほど伝わってくる。

一見すると、古いお寺の中に婚儀の絵が無数に掛けられているそれは怪談を思い起こさせるが、話を聞くと子どもを思う親や親族の粋な計らいであり、思いやりであり、ポジティブな奉納物とも受け取れる。

この他にも、例えば子宝祈願に赤ちゃんのお人形を奉納したり、お乳の出が良くなるようにとおっぱいをかたどった絵馬を奉納したりする風習があるお寺もある。(ちなみにおっぱいオブジェは、最新のものほどクオリティが上がっていっている気がする……)

これらも同じことだろう。見た目はかなりぎょっとするが、その裏側にある奉納者の思いを知るとキュートに見えてくるから不思議だ。