4月から一斉にスタートした2013年春アニメ。良作揃いのシーズンと言われるなか、特に高クオリティでファンを唸らせているのが人気コミックを原作とした『進撃の巨人』だ。突如出現した謎の「巨人」たちに人類が立ち向かうハードアクションで、ライトな日常ものが流行している昨今では珍しく、圧倒的スケールの絶望感を視聴者に味わわせてくれる。
今回はそんな『進撃の巨人』に代表される“侵略モノ”の注目作・定番作をいくつか紹介していきたい。
第1の本命『進撃の巨人』
諫山 創(著)
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原作は別冊少年マガジン連載の漫画で、コミックスが10巻まで発売されている。かなり早い段階からクチコミ中心で人気が広がり、2011年版『このマンガがすごい!』で見事1位に選出。講談社漫画賞を獲得したほか、TVアニメ化、さらには実写映画化も予定されるなど人気はとどまるところを知らない。発行部数も1巻当時は15万部程度だったのが、いまや累計1200万部に到達した。
人気の理由は、なんといっても巨人たちが生み出す究極の絶望感。発生原因は不明、知能や文化をもつかどうかも不明。どんな傷を受けてもすぐに再生される。大きさは数メートルの個体から60メートル級の超大型タイプまでさまざま。ただ彼らは黙々と人類に襲いかかり、生きたまま“捕食”する。生殖機能はなく、捕食者なのに消化器官も存在しない。……一体このモンスターは何なのか? それすらろくに明かされないまま、主人公たち人類は勝ち目の薄い反撃を強いられる。当然、読者(視聴者)もハラハラさせられっぱなしだ。
キャラクターは巨人に親を殺されて復讐を誓う少年・エレン、そして彼に病的なまでの好意を抱くヒロイン・ミカサを中心に個性派ぞろい。巨人たちに生活圏を奪われ、高い壁に囲まれた狭い生活圏で細々と生き延びる人類の存亡を賭けて戦う。
銃火器がない世界なので、主人公たちの戦闘手段はもっぱら刀剣を使った白兵戦。射出型のワイヤー装置で高所を自在に駆けまわる「立体機動」を駆使して、巨人の唯一の弱点(首の裏側)を切り刻むというリスクの高い戦術だ。スケール比でいえば生身でガンダムに挑むようなものなので、兵士たちの死亡率も極端に高い。侵入してきた巨人に食われ、巨人の生態を調査しに出かけて食われ……全編にわたって徹底的に絶望させてくれる。
数少ない欠点は、まだまだ発展途上にある作者の画力だったが、これはアニメ版で大幅に改善。キャラクターに色がつき、声がつき、動きが出たことで見違えるほど良くなった。まず『進撃の巨人』の魅力に手っ取り早く触れたい人はアニメ版を、たっぷり練られた謎と伏線をアニメに先がけて味わいたい人は原作コミックをお薦めしたい。公式サイトでは1~9巻の試し読みも可能だ。