全員が、もはやその役にしか見えないハマリ役ぶり

舞台『千と千尋の神隠し』より

特筆すべきは、セット、パペット、衣裳、振付、そして俳優の演技の境目が見えないこと。コロナ禍の中、これほど見事に溶け合うところまで持っていくには、一体どれだけ濃密な稽古が必要だったことだろう。

Wキャストのうち、取材できたのは橋本環奈の千尋、醍醐虎汰朗のハク、菅原小春のカオナシ、咲妃みゆのリン/千尋の母、田口トモロヲの釜爺、夏木マリの湯婆婆/銭婆の回。全員が、もはやその役にしか見えないハマリ役ぶりだった。

舞台『千と千尋の神隠し』より

とはいえ、ケアードは俳優それぞれの持ち味や解釈を尊重する演出家であり、そしてWキャストには個性はもちろん、時に性別まで異なる俳優が配役されている(上記の順に、上白石萌音、三浦宏規、辻本知彦、妃海風、橋本さとし、朴ろ美)。

別のキャストで観たら、きっとまた違った「千と千尋」の魅力が見えてくることだろう。その多彩さや可能性も含めてやはり、東宝の創立90周年を記念するにふさわしい超大作だ。

※宮崎駿の「崎」は立つ崎(たつさき)、辻本知彦の「辻」はしんにょうの点が1つ、朴ろ美の「ろ」は王へんに路が正式表記。

開催情報

舞台『千と千尋の神隠し』
2022年3月2日(水)~2022年3月29日(火)
※プレビュー公演2月28日(月)~3月1日(火)
会場:東京・帝国劇場
その後、大阪(4月)、福岡(5月)、北海道(6月)、愛知(6・7月)にて上演