Coccoが“今”を刻むための重要な“プロム”
ライブ後半は、ヘヴィなギターリフをバックに深く低く響く歌声で披露した新曲を皮切りに、「夜喪女」「Rockstar」と“ダークサイドクイーン”たるCoccoの真髄がさらに露わになっていく。
その流れのなかにあって「光溢れ」のあたたかさ、強さが際立ち、続く「7th floor」の激しいロックサウンドにも包み込むようなあたたかさを感じた。長田の光のようなギターソロやフィードバックノイズまでもが不思議な癒しを感じさせ、Coccoの歌がその音に触発されるようにさらにエモーショナルに響いていく。
ラストは美しいピアノサウンドとギターアルペジオに彩られた、圧倒的な光を感じさせる「L-O-V-E」から、ギターのディレイが空間を満たすエーテルのように鳴り響いた「星の子ら」へ。やさしく強く耳に沁みわたるCoccoの歌声、その深みは、まさに今最盛期を迎えていると確信した。
終演後、バンドメンバー全員と手を取り合って客席に向け挨拶する姿が微笑ましい。そして最後はステージ中央で最高に優美なレヴェランス(お辞儀)。すべてを出し切ったCoccoはその場でペタンと座り込んでしまうが、明るい照明のもと、はじけるような笑顔が印象的だった。
Coccoがこのタイミングで、『クチナシ』と『プロム』をフィーチャーしたツアーを行ったこと、そして鉄壁のロックバンドの布陣で臨んだのは必然だった。25周年という節目をセレブレイトする前に、このツアーはCoccoが“今”を刻むための重要な“プロム”だったのだ。
そしてこの“プロム”を終え、11月からは『25周年ベストツアー』が開催されるというニュースも飛び込んできた。今回のライブのMCでCoccoが「次回(のツアー)はサービスします(笑)」と宣言していたように、おそらくはオールタイムベスト的な選曲で、また違った祝祭感に溢れたライブになるのではないだろうか。次なるライブにまたもや期待が膨らむところだ。
Text:杉浦美恵