宮崎駿作品の普遍性と歌舞伎との親和性を初演時以上に強く感じる内容に

第三部『風の谷のナウシカ』より、左から)ナウシカ=中村米吉、アスベル=尾上右近、クシャナ=尾上菊之助、ユパ=坂東彌十郎 提供:松竹(株)

三部制という時間の制約もあり、前回あった二幕目がカットされ、ナウシカの師ユパ(坂東彌十郎)やペジテの王子アステル(尾上右近)、マニ族僧正(中村又五郎)らの見せ場が減ったのは残念ではある。

が、総花的な筋追いを止め、テーマを絞り特定の人物について掘り下げることを優先したのは、賢明な選択。遠くない将来に上演されるであろう「下の巻」では、また別のキャラクターに焦点が当たるのかもしれない。

第三部『風の谷のナウシカ』より、手前左から)ナウシカ=中村米吉、アスベル=尾上右近、クシャナ=尾上菊之助、ユパ=坂東彌十郎 提供:松竹(株)

マスクが外せない日々と世界で残虐な戦争が続くなかで、歌舞伎版『風の谷のナウシカ』を観る日が来ようとは思いもよらなかったけれど、宮崎駿作品の普遍性と歌舞伎との親和性を、初演時以上に強く感じることができた。再演と進化を重ねて、『忠臣蔵』のような歌舞伎の人気狂言に定着することを期待したい。

※尾上丑之助は体調不良のため、7月17日より休演。当面の間、一部演出を変更して上演。

※7月23日以降 全公演中止。詳細は公式サイトをご確認ください。