「もう自然なかたちで、特に感情も入れず、さらっとできました」

撮影/須田卓馬

草彅自身も、自らの声の表現についてさっぱりと答える。思えば、ナレーションに限らず、草彅剛という俳優のお芝居には不要な自意識がまるでない。ただそこにいる。ただ台詞を話す。なのに、受け手はその台詞の行間を、表情の余白を自然に読み取り、想像力を広げてしまう。

「確かにお芝居に関して自意識はひとつもないです。常に『早く撮影が終わればいいのに』と思ってる(笑)。こんなこと言うと怒られちゃいますけど」

そう冗談とも本音ともつかない答えで煙に巻きながら、草彅剛は大切なことを、まるでちっとも大切でないような口ぶりで続けた。

「逆にあんまりこだわっちゃうと、おかしいことになっちゃう。感情込めすぎても観ている方も疲れちゃうじゃないですか。それより、実際はそんなこと思っていないですけど、『早く帰って(愛犬の)クルミちゃんに会いたいな』ぐらいのマインドでいた方が、変に緊張もしなくていいんです」

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もともと俳優・草彅剛は勤勉家であることで有名だ。代表作のひとつである『僕の生きる道』では役の病状の進行に合わせて9kgの減量を行い、逆に『ホテルビーナス』では鋼のように肉体を鍛え上げ話題をさらった。そんな努力の人でありながら、こともなげに言う、「こだわりすぎない方がいい」と。

「剣士とかもそうですよね。すごい剣の達人も最初は一生懸命型を練習するんだけど、最後は力を抜いて刀を振った方が早いという境地に行き着く。そういう感じで、1秒でも早く帰りたいなと思っているぐらいの方が僕はいい芝居ができる気がします」