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この人の声を聞くと、どうしてこんなに癒されるんだろう。
草彅剛。日本を代表するスーパースターのひとりでありながら、『ブラタモリ』をはじめ、ナレーションの仕事も数多く手がけてきた。その朴訥とした語りは、清らかな水のようにすっと沁み込み、心を落ち着かせる。
公開中の映画『サバカン SABAKAN』でも草彅剛の声が物語に奥行きを与えている。演じるのは、成人後の主人公・久田孝明。作家として鬱屈とした日々を過ごす孝明は、ふと小学5年生の夏を共に過ごしたクラスメイトのことを思い出す。
草彅剛は自らの語りについて、どんな意識を持っているのだろうか。
「早く帰りたいな」と思っているぐらいの方が、いい芝居ができる
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「若いときから『ナレーションいいね』ってよく言われていたんですよね」
そう、おかしそうに当時のことを思い出す。
「なんだったら、『ナレーションの“方が”いいですね』なんて言われて。『“方が”ってどういうこと?』と思いながら(笑)。若いときは顔が出ないから、ナレーションはつまらないなと思っていたんですけど、今となっては自分のいいところのひとつなのかなと思えるようになりました」
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だが、ナレーションに関しては何か独自の修練や研究を積んできたわけではないという。
「ナレーションって磨きようがないですよね。どう磨くんだろう。昔、森本レオさんと共演したときに、レオさんが『剛くん、ナレーションとは』みたいなことを言ってたんですけど、そのときからレオさんが何を言ってるのかわからなくて、『そうですね』ってわかってるふりして聞いてた(笑)。
今もレオさんが何を言っていたのかはさっぱり思い出せない。たぶんレオさんもカッコつけたくて言ってたんじゃないかな(笑)」
飄々と笑い飛ばす姿には、まるで力が入っていない。この『サバカン SABAKAN』でもそうだ。大人になった孝明の語りと共に物語は進んでいく。けれど、その語りには力みがまるでない。