一生懸命生きることが、役を魅力的にする

撮影/奥田耕平

1作品、1作品、誠実に向き合い、経験を財産に変えてきた。芝居が好きだというブレない軸ができた今だからこそ、これからの道にも膨らむ夢がある。

「いずれは社会派の作品をやってみたいなという気持ちはあります。もっと内面をえぐられるような作品に出たいです。それは人が好きだから。人が好きだからこそ、もっと深い内面のところまで知りたいんです」

だがその一方で、遠い未来に想いを馳せるのではなく、今この瞬間にできることにベストを尽くすという信念も持ち合わせている。

「社会派の作品をやろうと思ったら、もっと僕自身が社会とか政治について知らなきゃいけないと思っています。きっと今いただけている役は、今の自分に合っているからだと思います。だから、あれこれ先のことを考えるよりも、与えられた役をどう深くしていくのか、どう魅力的にしていくのかに全力を注ぐことが、今の自分のやるべきことなんだと思っています」

撮影/奥田耕平

役を魅力的にするために、俳優がすべきことは何か。そう尋ねると、間髪入れずに答えが返ってきた。

「もう向き合うことしかないです。あとは、一生懸命生きることです。一生懸命生きている人は演技にちゃんとそれが出ていると思います。僕が素敵だなと思う先輩方は、いろいろ自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分で感じて、その都度自分にとっての正解をちゃんと自分で選んでここまで歩んでこられています。その積み重ねが芝居を深くするし、存在感になるのだと思います」

そう先人たちをリスペクトするからこそ、杉野遥亮も流されない生き方を目指す。

「僕たちの世代はSNSがあって、そこを覗けばいろんな情報が転がっています。それを見て、その中の正解らしきものに自分を押し込んで生きていったら、きっと毎日は楽だと思うんですよ。でも、僕にはそれができないんです。不器用でも、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分で感じて、自分の足で歩いていくしかないと思っています」

模索の時期を経て、杉野遥亮の言葉は確実にシャープになっている。

「本当ですか。自分ではわからないですけれど、確かに年々シンプルになっているとは思っています。今年の2月に『ミロ展−日本を夢みて』のナビゲーターをさせていただいた時、実際に展示も見させてもらったんですけれど、晩年に近づくほどミロの表現もシンプルになっていったんです。なぜかそれにすごく共感したんですよね。

自分もここ数年、ずっと削ぎ落とすということを意識していました。大事なことって意外とシンプルなのかもしれないと気づいたんです。結局やることってシンプルです。楽しいかどうか。好きか嫌いかでしかないんです。自分というものがわかってきたおかげで迷わなくなりました」

きっとこの言葉も、未来の自分へのタイムカプセルとなるだろう。大事なことに気づいた杉野遥亮は、ただシンプルに芝居を追求し続ける。

ヘアメイク/HORI(BE NATURAL) スタイリング/伊藤省吾(sitor)

作品情報

映画『バイオレンスアクション』
公開中

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