税制優遇制度の弊害
先ほど、NISA等では非課税となる運用期間は限られるといいました。実はこれが、資産形成の邪魔になることが想定されます。
本来、資産形成とは、使用目的と目標金額を定めてその金額に向かって積み立てていくものですが、非課税期間と非課税枠(投資できる金額)が限られると、非課税の間に非課税枠を目一杯使わないともったいない!という気持ちが生じ、本来の積立ペースを乱してしまう場合があります。
また、非課税期間が限られていることで、非課税の間に少しでも利益を確定しておきたいという気持ちになるのも否めません。
このように、税制優遇制度は本来であれば資産形成の後押しとなる手段の一つであるにも関わらず、『制度に振り回されてしまう』と言った落とし穴がある点には十分な注意が必要です。
なお、iDeCoの場合、60歳から受け取ることが出来ますが、必ず60歳で受け取らなければならないわけではなく、75歳まで受給開始時期を伸ばすことができますので、受給開始のタイミングをある程度自分でコントロールすることができると言えるでしょう。
国が制度に込めた強い思いとは…?
以上のように、NISA等やiDeCoは税制優遇の大きさからも国民に資産形成をしてほしいという強い思いが込められているのはなんとなくイメージできるのではないでしょうか。
さらにNISA等に比べてiDeCoの方が手厚い税制優遇があると考えると…自ずと国からのメッセージが伝わってきませんか?
そう、例えるなら「現役時代の税金の負担を軽くしてあげます。その代わり、もう老後の面倒は見られませんので自分で老後の準備をしてください。」ということですね。
これからは、年金はあくまでも社会保障の一環で最低限の生活を保障するものであって、現役時代の生活水準を約束してくれるものではないことは覚悟しておきましょう。
だからこそ、今のうちに自助努力で資産を形成してほしいという思いが手厚い税制優遇に込められているのです。
正しい税制優遇の捉え方
税制優遇は「あくまでも、おまけであって目的ではない」ということと、「国は老後の面倒は見られないので自助努力で資産形成をしていきましょう」というメッセージを発信していると捉えてください。
制度に振り回されることなく自分が思い描く老後の生活をイメージし、今からどういった資産形成に取り組んでいけるかという視点で準備しましょう。
【執筆者プロフィール】計倉 宗州(とくら そうしゅう)
キッズ・マネー・ステーション認定講師/DCプランナー/ファイナンシャルプランナー
子供達にはお金を稼ぐことを人生の目的とするのではなく、稼いだお金で自分らしいお金との付き合い方をみつけ、自立して堂々と生きていく“おとな”になってもらいたいと考え、都内及びつくば市を中心に自分らしさを見つけるワークショップや個別相談を行っています。