朝8時半。オープン1時間前の『B²(ビースクエアード)東陽町店』の厨房では、4人のパン職人が仕事に没頭していた。
ひとりで黙々とパンを焼く勝見伸一シェフ。
生地を何度も重ねてクロワッサン生地を作る人。
カレーパンを揚げながら別の仕事をする人。
芳ばしく焼けたパンにあんこをしぼり、あんバターを作る人。厨房が広いせいか、あわただしさはほとんど感じられなかった。
店舗ごとに配合やレシピが異なる
東陽町店の厨房がめざめるのは朝6時。前日仕込んだ天然酵母の生地でパンを焼く。長時間発酵なので、生地に甘みがあるのがビースクエアードのパンの特徴だ。
ビースクエアードにはここ東陽町店の他、清澄白河本店、南麻布店、吉祥寺店(2022年10月オープン)があり、それぞれの厨房でパンを焼いている。
すべての店で同じパンを同じレシピで焼いていると思いがちだが、そうではないと勝見シェフは教えてくれた。
「配合だったり、クロワッサンに卵を塗って焼く店もあれば塗らない店もあったり……。その店独自に焼いているパンもあったりします」
とくに東陽町店はパンの数も種類も多いそうだ。60種類焼いている中からおすすめのパンを勝見シェフに5つあげてもらった。
B²(ビースクエアード)シェフイチ推しのおすすめパン5選
エスプレッソロール(340円/以下すべて税込)
ひとつ目は「エスプレッソロール(340円/以下すべて税込)」。
ビースクエアードに来たのは3回目。初回は清澄白河本店だった。
シナモンロールを食べながらコーヒーを飲み、その足で東陽町店に来てマスカルポーネあんぱんを買った。どれも個性的でおいしかった。
「シナモンロールもエスプレッソロールも27層に重ねたクロワッサン生地なんです。
エスプレッソは、清澄白河本店で自家焙煎した豆(後述)を東陽町店で挽いたエスプレッソを使っています」
シナモンロールもエスプレッソロールも齧るたびに薄い皮がこぼれ落ちる、サクサク感が印象的。しかもエスプレッソロールは、ほろ苦さと甘味が混在していて舌に心地よかった。
自家製は、エスプレッソロールのエスプレッソだけではない。ミルククリームやベシャメルソース、マヨネーズ、あんこなど、パンに使う材料の大半を厨房で手作りしているというのだ。
パン・アラ・クレーム(270円)
「『パン・アラ・クレーム(270円)』のカスタードクリームも自家製です。カレーのように既製品を使うものもありますが、できる限り手作りのパンを食べていただきたいと思っています」
「パン・アラ・クレーム」を手でわったら、ほっぺたのようなふわふわのパンの中からトロントロンで濃厚なカスタードクリームが顔をのぞかした。甘すぎないところもよかった。
ちなみに、シナモンロールやキャロットケーキにそえるクリームチーズも自家製だ。
バゲット(302円)
「バゲット(302円)」は北海道産キタノカオリ、カナダ産小麦、フランス産小麦をブレンド。
「天然酵母と小麦の香り、風味が強いのが特徴です。そのままが一番だと思いますが、パニーニ(サンドイッチ)に加工しているものもあります」
皮がパリッとしていて、芯がしっとりしていて食べごたえがあった。とくにクープ(こげた部分)がかりかりさくさく。