いわゆる名作とよばれるものがいかにして生まれたのか?
その作者の半生の物語というのもドラマチックだったりします。日本で言うと『ゲゲゲの鬼太郎』を世に送り出した水木しげる先生ご夫婦を描いた「ゲゲゲの女房」がまさにそういう作品でした。
さて本作『ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密』は昨年映画も公開され大ヒットとなった『ワンダーウーマン』の作者ウィリアム・モールトン・マーストンとその妻たちの愛の物語です。
ある意味、これも”感動的な夫婦もの”ではあるのですが一筋縄ではいかない作品になっています。
ワンダーウーマン誕生秘話
映画としてどこまで脚色されているのかわからないので、まずこのマーストンとワンダーウーマンの関係について、世の中的に言われていることを書くと。
”マーストンはコミック畑の人ではなくて心理学者。
当時、『スーパーマン』をヒットさせていたコミック出版社(のちのDCコミックスですね)が、新たな読者を獲得するための知恵をマーストンに求めた。
マーストンは女性ファンを取り込むために、それまでにない女性ヒーロー”ワンダーウーマン”を生み出した。
このマーストンは「うそ発見器」の発明につながる発見をした人で、また妻と愛人と一緒に暮らしというかなりぶっとんだ人だった。”
映画は確かに世に伝えられている、このマーストン像を描いています。
ただ映画では妻と愛人も恋愛関係=つまり同性愛であり”三人婚””レズビアン”という描き方がされているし、また”愛する人に服従する幸福”というマーストンの価値観がSM、緊縛的な行為につながったりと、かなりエロチックな要素が出てきます。
だからワンダーウーマンがテーマの映画だからと言ってお子さんと観てはいけません(笑)。
そしてマーストンらのこの自由な愛の形は、当然(特に当時の)世間で受け入られることはありません。
マーストンは自身の愛の正当性を証明するため=そしてその考えが大衆に広まれば世の中はもっと幸せになると信じ、それをコミックという形でオブラートにつつんで、世に問いかけたのが”ワンダーウーマン”だったと解釈されています。
つまり本作では、ワンダーウーマンが”出版社に頼まれマーストンが作った”ものではなく”マーストンの持ち込みだった”というわけですね。
どっちが正しいかはわからないのですが、まあ映画としては後者の方がドラマ性があります。
ワンダーウーマンは今までの女ヒーローとは違う
劇中、こういうシーンがあるんです。
ワンダーウーマンの企画を出版社に持ち込んだ時に最初に編集長に言われるんです。女ヒーローは今までトライしたけど全部ダメだったんだ。
だからお呼びじゃない、と。
でもマーストンはくいさがる、ワンダーウーマンは今までの女ヒーローとは違うんだ、と。
その言葉どおりワンダーウーマンはヒットします。その違いはなんだったのか?