彼の人間関係が目について…
「彼は離婚後にひとり暮らしをしており、もう人目を気にせず遊びに行けるしお泊りも自由だし、あの頃『この人が独身だったら』と想像していたことが叶う交際に浮かれていたと思います。
彼のほうも『また君と会えて本当にうれしい』と何度も言ってくれて、平日も週末も毎日彼の部屋に私が通い、何時間もベッドで過ごす日もありましたね。
不倫の過去があるからこそ今の現実が本当に幸せで、もちろんいきなり結婚とかは考えなかったですが、このままずっと一緒にいられたらと思っていました。
でも、想像と違っていたのは彼の人間関係です。
『離婚してから自由に友達を作れるようになった』と楽しそうに話していて、不倫していた頃には耳にしなかった男友達との付き合いや女性の友人の話が彼から飛び出すたび、心がちくっと痛む自分がいました。
『君のことが好きだ。大事にしたい』とまっすぐ言ってくれる彼がいて、だから彼がよく行く居酒屋で知り合い仲良くなった女性とか、会社の同僚の女性とかの話が出ても落ち着いて聞けるのですが、どこかで『本当に私のことが好きならほかの女性と仲良くはしないのでは』と考えてしまって。
なかでも私と不倫していた頃から頼りにしていたと話す同僚の女性については、『今は堂々と紹介できるから、いつか会ってもらいたい』と言われたときに『イヤだな』と思ってしまいました。
つらい結婚生活から解放されて、好きなように人間関係を作れることを楽しむ彼の気持ちはわかるけれど、一方で彼の周囲にいる女性がどうしても気になってしまうのです。
彼が会社の飲み会に出かけた週末、一次会が終わったと連絡をもらって駅まで迎えに行ったら、知らない女性と仲睦まじそうに話す彼を見て、胸がズキンとしました。
『あれ、誰?』と助手席に乗り込んだ彼に思わずきつい口調で言ってしまい、驚いたように『あれが前から話している同僚だけど……どうかしたの?』と返す彼に『距離が近くない? 前からあんな感じなの?』と不機嫌を隠せずにいました。
『前も君はそういうところがあったけれど、僕を信じられないの?』と彼がため息をついて、『彼女と会社の人はまったく違う存在だし、付き合い方に文句を言われたくない』ときっぱり言われたのはショックでしたね……。
嫌な空気のままその日は泊まる話も出ず、私はひとりで自分の部屋に帰りました。
彼の言葉で『あの頃と同じ自分になっている』と気がついたとき、心臓が嫌な音を立てるのがわかりました」