横浜流星を魅了する格闘技の「儚さ」

撮影/奥田耕平

――翔吾を演じる上で、一番苦労されたところ、気を遣われたのはどういったところになりますか。

やっぱりボクシングシーンです。半年間、練習期間があったので、言ってしまえば形だけで見せることはいくらでもできたと思うんです。でも、そうしたくはなかった。

松浦慎一郎さん(ボクシング指導・監修)も、「今までにないボクシングシーンにしたい。プロの方が観ても失礼のないようにしたい」とおっしゃいていて、本当に難しいものを作って持って来てくださったんです。

それを自分も責任を持って乗り越えようと思いましたし、覚悟としてプロテストも受けました。

それは本気でやったんだぞ、という覚悟もそうだけれど、今までのものとは違うという証明もしたかったですし、格闘技、格闘家へのリスペクトがあるからこそ、少しでも格闘技界を盛り上げられたらという想いもありました。プロテストにも合格できたので、ホッとしています。

――そこまで掻き立てられたのはやっぱり格闘技の想いがあったからなんですね。

言っても芝居は嘘なので、それをどこまでリアルにできるのか。追及したい気持ちはありし、ひとつの形として、ボクシングには分かりやすくプロという資格があるので必死に練習しました。

――プロテストを目指そうと思ったのはどの段階だったんですか?

撮影中です。本物のレフリーの方に世界タイトルマッチのシーンでも担当していただいたんですけど、その方にも背中を押してもらったり、あと(片岡)鶴太郎さんもライセンスを持っているので、「いけるよ」と言ってもらえて。

そんなみなさんの言葉や、この作品を通して自分の背中を押されましたし、一歩踏み出す勇気をもらいました。

撮影/奥田耕平

――横浜さんがそこまで格闘技に魅せられるのはどういった理由からなんでしょう?

なんだろう……。儚さかな。数分で勝ち負けが決まってしまう儚さだったり、格闘技は現役でいられる年数も短いですし、その中で一瞬を掴み取ろうとされているんですよね。

あと、やっぱり相手がいるからこそ成り立つものなんです。最初は煽り合っているのに、最後はみんな必ずハグし合うんです。

――確かに、今回の作品でもありましたね。

みんながその日のために命を賭けているんですよね。

本当に下手したら死んでしまう可能性もあるのに、それを恐れずに。ただ強くなりたいと思っている人もいるかもしれませんが、それだけじゃない。男として燃える部分がある。そういうのを全て含めて、格闘技には魅力があるな、と。本当に人間ドラマだな、と思っています。

――それぞれの試合に物語がある?

ストーリーを無理やりつけたがることもあるんですけど、ひとつのショーというか、作品にも感じていて、少し芝居と通ずるところもあるな、と思っています。

煽り合いから駆け引きが始まって、相手がこう来たら自分はこう返す、というキャッチボールがあったり、リングでは2人しか分かち合えないものがあって、終わったらちゃんと称え合って、観ていた人たちは心を動かされて。そういったところにも通ずるものを自分は感じています。