韓国のスンデ(腸詰)に似た謎の物体を食べてみる

【台湾食べ歩きの旅 #8】蘇澳駅のそばにある「阿英小吃部」はサメの燻製をはじめ、魚の珍しい部位をつまみに冷えたビールを飲むことができる

昼には少し早いが、お目当てのサメの燻製食堂を訪れた。

店は3年半前そのままの姿で営業していた。通りに面したカウンターの上には赤い看板に「阿英小吃部」とある。

以前は閉店間際に来たので女将さん一人だったが、今日は日曜の昼時とあって、家族総出で店を回しているようだ。

とりあえずサメの燻製とビールを注文。

【台湾食べ歩きの旅 #8】これだけのために蘇澳を訪問したといっても過言ではない。蘇澳のサメの燻製は新鮮なうえ、味に深みがある

サメの燻製は、私が台湾に暮らしていた頃にファンになった。ふわふわとした食感の白身魚に燻製の香ばしさが加わる。

これがわさび醤油にとても合う。ハンペンよりも歯ごたえがあり、魚らしい香りが鼻をくすぐる。上質な刺し身を食べているようだ。

サメの燻製だけで十分だったが、隣のテーブルに運ばれていった黒い物体に目が行く。

「あれは?」と聞くと店員と客がうれしそうに「宜蘭独特の腸詰だ」と言う。見た目は韓国で食べたスンデ(腸詰)に似ている。

迷わず1人前を注文する。

【台湾食べ歩きの旅 #8】宜蘭風スンデとでも言おうか。豚肉とタピオカ粉の腸詰は、見た目ほど味が濃くなく、あっさりしている

運んできた店員、店主らしきおじさん、他の客たちが全員、私が宜蘭風スンデを口に運ぶのをじっと見守っている。

感想を言わなければ……。けれど、黒々とした見た目に反して、味はとても淡白でさっぱりしている。

中には刻んだ豚肉とタピオカ粉が入っているそうだが、肉よりもタピオカのゼリー質が勝っていて、脂身も少なく、ちょっと拍子抜けといった感じだ。

「独特な味ですね」とその場は無難に切り抜けたが、あらためてタレをつけて食べてみると、これがなかなか味わい深い。

ぷるぷるした食感に、腸詰独特のほのかな臭みが加わり、これが蘇澳の湿った空気感にマッチする。

台湾の東北海岸に取り残されたような小さな町で、昼酒を飲みながらサメや珍味をつまむ。

新鮮な「魚雑(モツ)」が豊富なのは、ここが港のそばだからだろう。

(つづく)

フォトギャラリー台湾有数の漁港の風景・グルメをさらに見る
  • 【台湾食べ歩きの旅 #9】南方澳漁港の食堂で食べた刺身盛り合わせ
  • 【台湾食べ歩きの旅 #9】南方澳の街なかに並ぶグアバ。媽祖廟参拝のお供物として売れ行きは好調なようだ
  • 【台湾食べ歩きの旅 #9】南方澳の媽祖廟(南天宮)の2階には翡翠でできた媽祖様が鎮座する。全身緑色の媽祖様は他では見たことがない
  • 【台湾食べ歩きの旅 #9】媽祖廟(南天宮)の入口は案外近代的だ。この日は週末ということもあり、観光客や家族連れが多く訪れていた
  • 【台湾食べ歩きの旅 #9】港の正面に構える媽祖廟からの眺め。三重、四重に漁船が横付けされた様子は圧巻だ。これは第3漁港で、南方澳にはほかにも第1、第2漁港がある

みつせ のりこ:90年代から台湾と関わり、台北で留学や就職、結婚や子育ても経験。現在は執筆や通訳、取材コーディネートの仕事で日本と台湾を往復している。著書に『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾縦断! 人情食堂と美景の旅』『台湾一周!!途中下車、美味しい旅』など。株式会社キーワード所属。