親が普段から持っておきたい心構え

——子どもを叩いてしまって大きな罪悪感を抱く親は多いですが、叩いてしまった後に親が陥ってはいけない考え方や精神状態はありますか?

坂田「まさに、『罪悪感を抱いて考え込んでしまう』というものが、陥ってはいけない状態ですね。

罪悪感は自分に責任を感じている状態で、言い換えれば、自分のせいにしているわけです。自分だけのせいにしても何も状況は変わりませんし、問題は解決しません。

先ほどNGなフォローとして『子どものせいにして体罰を正当化する』というものを挙げましたが、実はやっていることはこれと同じ次元のことです。

親がいくら罪悪感を抱えても、叩いてしまった事実は変えられません。罪悪感は捨てて、問題解決の思考に切り替えていきましょう」

——叩いたり怒鳴ったりという突発的な行動に出ないために、親が普段から心がけておきたいことや持っておきたい考え方はありますか?

坂田「まず、誰しもが『叩いて教育をするという選択を持っている』という事実を認めましょう。これを否定しても体罰はなくなりませんし、過剰な罪悪感の原因になります。

その事実がある中で、叩くという選択をしないために、さまざまな考え方や手段を身につける必要があるのです。

怒って叩くことで、子どもはおとなしくなりますし、教育効果があるように見えますよね。しかし、子どもに恐怖を植えつけることで行動を抑えつけることは、子どもが他人の顔色をうかがって行動する原因になります。

これでは、子どもが持つ将来の可能性まで抑圧してしまうことになりかねません。

繰り返し直してほしいことを伝えても、子どもの行動が変わらないという理由で叩いてしまったなら、そもそもの環境や仕組みを変える思考を持つべきですね。

具体的には、伝え方を変える、対象の物事に取り組む際の仕組みを変える、などです。この思考を持つことで、自分なりの『体罰をせずに教育する方法』を見つけることができると考えています」

また、坂田さんは叩いてしまった場合のフォローに際して、大切なことは「日常での関係づくり」だと話しています。

子どもの人生は親のものではなく子どものものです。親はサポートすることはできても、コントロ―ルすることはできません。これをしっかり認識しておきましょう。

子どもは何があっても大丈夫、乗り越えられると信じて接すれば、子どもは普段からのびのびできるのです」

子どもにイライラしてしまうのも、声を荒げてしまうのも手を上げてしまうのも、坂田さんの言う「親は子どものサポート役」という前提を忘れてしまっているがゆえなのかもしれません。

ついつい、手を貸して口を出したくなりますが、グッとこらえて子どもを信用することが、いざというときに意見をしっかり出し合える関係性を築くことにつながるのではないでしょうか。

【取材協力】坂田 聖一郎(株式会社ドラゴン教育革命代表)

愛知教育大学教育学部卒業後、東京NSC9期に入学。同期だった現在「しずる」村上純とコンビを結成するも解散。その後、愛知教育大学大学院に入学。大学院生の傍ら、定時制高校で非常勤講師として国語を教える。卒業後、愛知県豊田市の正規教員として小中学校に勤務。2020年7月には「株式会社ドラゴン教育革命」代表取締役に就任。2022年「ままためコーチング塾」をスタート。

ライター&エディター。マーケティング、広告関係の職種を経て、出産をきっかけにライターに。現在は女性向けや子育て関連等のwebメディアでライター、エディターとして活動し、2歳児のマイペースな息子にのんびり育児を実践中。猫と焼肉とビールをこよなく愛するテンプレート小市民。