正GKの座を突如として失ったカシージャス
昨年12月、カシージャスは10年にわたり守り続けてきたレアル・マドリーの正GKの座を突如として失った。対立関係にあったジョゼ・モウリーニョ監督(当時)による一時的な見せしめだと誰もが信じて疑わなかった突然の先発落ちは、その後当初の予想を大きく上回る事態へと発展する。
第2GKアントニオ・アダンの出場停止により先発に復帰したのもつかの間、カシージャスは1月23日のバレンシア戦でアルバロ・アルベロアと交錯すると、左手親指の付け根を骨折し、2カ月の戦線離脱を強いられてしまった。
ほどなくしてモウリーニョは「就任当初から欲しかった」というディエゴ・ロペスをセビージャから獲得。すぐさま正GKに据えると、カシージャスは復帰後も出場のチャンスを与えられぬまま、失意のうちにシーズンを終えることとなった。
プジョルが膝を緊急手術——。3月15日、カシージャスの離脱に続いて今度はバルセロナを衝撃のニュースが襲った。昨年10月頃から痛みを抱えていた右膝の半月板に損傷があることを知った夜、プジョルは数時間でも早く復帰すべく、その場で即刻、手術を受けることを申し出た。これまで何度も彼の両足にメスを入れてきたラモン・クガット医師は言う。
「昨年痛めたのと同じ箇所だよ。私は無傷で一流になった闘牛士などひとりも知らない。接触の多いフットボーラーも同じだ。内視鏡でチェックしたところ、半月板が少し傷ついていた」
プジョルは昨年5月のエスパニョール戦にて同右膝を痛め、ユーロ2012の出場を断念。その後も相次ぐトラブルに見舞われながら、毎回、医師の見通しを上回る早さで復活を遂げてきたのだが、今回ばかりは一筋縄ではいかなかった。「CL決勝に間に合わせることは可能だろう」と言っていたクガットの言葉とは裏腹に、シーズン終了まで彼がピッチに戻ることはなかった。
再起を誓った今シーズンも、ふたりのキャプテンを待っていたのは苦難の日々だった。約4カ月も実戦から離れた状態で迎えた6月のコンフェデレーションズカップにて、カシージャスはビセンテ・デル・ボスケ監督の絶大な信頼を支えに開幕戦と準決勝、決勝の3試合でプレー。モウリーニョがクラブを去り、心機一転で臨んだレアル・マドリーのプレシーズンでは再び守護神として開幕を迎えるべく、気合の入ったセーブを見せていた。
だが大方の予想を裏切り、カルロ・アンチェロッティ新監督は開幕戦の先発にディエゴを選択。その決断は、ハイボールへの対応や守備範囲の広さ、足元の技術といった点でカシージャスに勝るディエゴを評価した指揮官の好みなのか、一部で噂されているようにモウリーニョとの対立をきっかけに関係が悪化したフロレンティーノ・ペレス会長の意向に基づいているのかは分からない。いずれにせよカシージャスがディエゴとの争いに敗れた事実は変わらず、再び彼は第2GKとしてシーズンをスタートすることになった。