7・8月の女子Fリーグ月間MVPは、原川菜々子「選手が受賞。第4節にイタリアから復帰すると、2試合連続ハットトリックを達成、第7節には一挙4得点。出場5試合で10得点という驚異的な決定力を示した。




7・8月の女子Fリーグ月間MVPは、フウガドールすみだレディースの原川菜々子選手が受賞した。今季開幕後にイタリアのクラブからすみだに復帰して第4節から出場すると、いきなり2試合連続ハットトリックを達成し、第7節は一挙4得点。出場5試合で10得点という驚異的な決定力を示した。さらには体を張った守備でも貢献するなど、チームに不可欠な存在となった。しかし彼女は、再びの移籍を決断。9月後半に開幕するセリエAに向け、イタリアの別のクラブへの加入が決まった。瞬く間にリーグを席巻し、颯爽と世界の舞台へ舞い戻る彼女が見据えるものとは。原川選手の受賞インタビューをお届けします。

インタビュー=伊藤千梅(SAL
編集=本田好伸(SAL

※インタビューは9月3日に実施しました。
(イタリアへの移籍は取材日の直前にオファーがあり、契約など条件が固まり、すみだから7日にリリースが発表されました)
ここまでの大量得点に自分でもびっくり?
──7・8月の女子Fリーグ月間MVPの受賞おめでとうございます!
ありがとうございます。まずは、とてもうれしいです。自分のなかでは(チームを勝ちに導けなかったことなどもあり)悔しさもありますが、大きな喜びを感じています。

──悔しさがあるのですね。
そうですね。特にSWHレディース西宮戦やバルドラール浦安ラス・ボニータス戦ではフリーでシュートを外したり、クロスバーに当てたりしたシーンがありました。自分が決定機を逃さなければ勝てた試合だと思うので悔しさがあります。

──第4節から出場して5試合で10得点。得点ランキングで暫定トップです。
正直なところ驚いています。そんなに多くゴールできるとは思っていませんでした(笑)。これまでのシーズンはここまでの大量得点はなかったので、自分でもびっくりです。

──量産できた要因はありますか?
特になくて、今まで積み重ねてきたことが少しずつ結果に結びついてきていると思います。

──チームの状態も良さそうです。
すみだに長く在籍してきた比較で考えても、チームの状態は良いと思います。上位チームとも互角に戦えていることは大きな成果ですね。

──これまでのシーズンと違う点はありますか?
「勝つためにどうするか」という意識は強まっていると感じます。試合ごとに明確な戦略があって「この相手に対してはこう戦おう」といった具体的なアプローチができていますし、「試合に勝つ」という最大の目的をしっかりもった上で試合に臨めていると思います。

──今年から就任した窪堀宏一監督はどんな指導者ですか?
どう表現すべきか難しいですが、監督らしくないようで、監督らしい(笑)。ピッチ外では選手からもよくいじられていますが、練習や試合では勝負にこだわって、常に勝利するための方法を考えている監督だと思います。

──ファーストセットのメンバーと一緒にプレーしていて、どうですか?
(勝俣)里穗さんとはこれまでも一緒にやってきていて、たくさん助けられているし、いつもありがとうございますと思いながらプレーしています(笑)。他の選手もそれぞれ特徴がありますし、一緒にプレーしていておもしろいです。お互いのスタイルも分かっているので、やりやすいし楽しいです。
イタリアで感じた日本と異なる“血の気”
──原川選手は昨年7月にセリエAのアトレティコ・フォリーニョ(Atletico Foligno)に移籍しました。どのようにして海外挑戦にいたったのでしょうか?
7年ほど前、チームでイタリア遠征に行って海外でフットサルをする楽しさを感じたことがきっかけです。それからはずっと海外挑戦したいと思っていて、日本のシーズンオフの期間に3週間から最大2カ月ほどスペインやイタリアのチームの練習に参加していました。去年は正式にオファーをもらえたので、まずは1シーズン戦って帰ってきました。

──イタリアでプレーしてみてどうでしたか?
すごく楽しかったです。向こうでは毎週末に試合があるので、フットサル選手としてやっていくにはいい環境ですし、貴重な経験でした。

──イタリアではプロとしてプレーしていたのですか?
そうですね。私はプロとして契約していました。ただ自分が加入したチームはプロチームではなかったので、他の選手は働きながらプレーしていました。

──環境は日本とあまり変わらない?
環境はクラブによって異なります。チームによっては全員プロのチームもありますし、資金力で待遇や条件が全然違うので、比較するのは難しいですね。

──イタリアはどんな部分で日本との違いを感じましたか?
特に感じたのは、血の気です(笑)。ボールに対する執念というか、球際や気持ちの部分は大きな差があると感じました。

──それはどこからきているのでしょう?
そもそもの考え方や文化の違いは大きいと思います。日本では普通だと思えることでも、向こうでは違ったりしたので。

──考え方や文化の違いはどんなところで感じましたか?
普段から違うことばかりですが、例えば試合前にアップをしないで踊っているとか(笑)。日本であればピッチ内アップの前に各自でアップするのが当たり前ですが、向こうは試合開始1時間半前に会場に入って、ひとまず控え室で踊ってから「よしいくぞ」となっていました(笑)。あとは、そこまで集団を意識しません。練習以外の面でも、それぞれがやりたいこと、やるべきことをやっていると思います。

──試合前に踊る……初めて見た時はどうでした?
本当にびっくりしました(笑)。でも驚くことが多すぎて、次第に慣れていきました。

──イタリアでプレーして得たことは?
一番は球際の強さです。強度の部分と、あとは日本ではありえないようなタイミングで激しいコンタクトが来るので、そういったところは学んだと思います。

──2シーズン目も戦うつもりだったのですよね?
そうですね。ただ、シーズンが終わるとビザが切れてしまうため1年で帰国しました。その後、今シーズンの調整をしていくなかでうまく話がまとまらなかったので、登録だけして一度日本でプレーすることにしました。でも実は、数日前にイタリアに戻ることになりました。アウダーチェ・ベローナ(Audace C5 Verona)というチームからオファーをもらって、「早く来い」と言われているので、急いで戻ることになりました。
感謝を胸に、イタリアでの再挑戦へ
──普段からプレー面で取り組んでいることはありますか?
自分自身、怪我が多かったので、予防やパフォーマンスを上げるために、継続的にトレーニングを行っています。個人でウエイトトレーニングをしたり、元フウガドールすみだの内田淳二さんとトレーナーの大森知さんが代表をしている身体操作のスクール「GOTSフットボールスクール」に参加して、早くプレスにいく方法や守備の仕方、ステップワークなど怪我や疲労のない身体操作を教えてもらったりしています。

また、日本に帰ってきてからは元立川アスレティックFCレディースのトレーナーさんから新たにいろんなことを教えてもらいました。

──これまではどんな怪我を経験したのでしょうか?
前十字靭帯断裂や足首の腱の脱臼、肩の亜脱臼など、いくつかの大きな怪我を経験しました。怪我歴で言うと30代後半のような感じです(笑)。

──現在、怪我なくプレーできている要因は?
丁寧にトレーニングとケアの方法を教えてもらっているので、それを継続していることですね。あとは、以前の怪我から学んだ部分も大きいと思います。

──練習前の準備にはどれくらい時間をかけていますか?
練習の1時間前から体づくりを始めます。ストレッチや体幹トレーニング、ステップなど、他の人と比べてもアップにはかなりの時間をかけていると思います。

──原川さんにはSNS投稿など競技外の部分でもプロ意識を感じます。
スポンサーさんにすごくサポートしてもらっていますし、海外にいたこともあり、今はファン・サポーターさんの応援をより感じることができています。本当にありがたいですし、スポンサーさんやファン・サポーターさん、クラブがあって初めて自分たちがプレーできていることを忘れずにしたいです。

──海外での経験もその考え方に影響しているのでしょうか?
イタリアに行ってからその思いはより強くなったし、プロである以上はやらないといけないと思っています。向こうではプロではない選手たちが、仕事を理由にできないといった言い訳を一度も聞いたことがありません。日本でも、プロではないかもしれないですけど、企業やクラブ、ファン・サポーターさんがお金を出してくれて自分たちがプレーできているので、プロ意識をもってプレーしないといけないということを感じています。

──フウガドールすみだレディースはどんなチームですか?
本当に仲が良くて、明るい雰囲気のチームです。ふざける時はとことんふざける、楽しいチームだと思います。

──特にどんなところが好きですか?
シーズン途中の加入でも「おかえり」と受け入れてくれて、また離れることになっても「いってらっしゃい」「頑張っておいで」と見送ってもらいました。本当にすごくいいクラブだと思いますし、チームのみんなに感謝しています。

──イタリアに戻ってからの目標はありますか?
まずは日本にいた時のように、得点といった目に見える活躍をしたいです。そして今後は、世界の選手たちを超えたいと思っています。どんな部分でもいいけど「この選手すごいな」と、いろんな人に言ってもらえるような選手になっていきたいです。

──来年のワールドカップはもちろん……?
はい、もちろん目指しています。ただ、代表メンバーを自分が選べるわけではないので、今は自分ができることをやっていくだけだと考えています。

※選考協力:PANNA-FUTSAL@panna5
※取材協力:
SAL@sal_japan

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