自分たちでつくる場
―本当は自由に子育てしたいけれど、既存の場所や施設ではできないからこちらへ入る方もいるのでしょうか。
N「いると思います。日野市に引っ越して入ってこられたり。」
―子どもの数が増えていることからも、自然の中で子どもの自主性を重んじて育てることへの関心は高まっているのではないでしょうか。
N「ニーズは感じますね。ただ、新しく入りたいという方には、必ず見学して、体験していただくようにしています。」
―入ってみて、思ったのと違った、と思われないためでしょうか。
N「それもあります。いろんな方から問い合わせがありますが、その都度、ゆっくりお話をさせてもらいます。
大変は大変なのですが、その面倒くささもひっくるめて自分たちでつくる場所なんですよね。それを続けてきているだけで、今も完成形なわけではまったくないんです。」
―怪我ひとつとっても、価値観が違うとトラブルになりかねませんよね。
N「価値観の照らし合わせは特に重要です。あと、ここに入れると運動が得意な子になると思って来られる方も時々いますが、個性が際立つことはあるかもしれませんが、○○が出来るようになる、という保育を謳っているわけでは決してありません。
ここの保育が一番いいんです、という言い方はしていなくて、子どもにとって、本当に大切なことは何かを一緒に考え、共に場づくりをしたいという人に来てほしいと思っています。」
―なるほど、そういった丁寧な場づくりが、先ほどの栗拾いの話のように、地域の方とのつながりが生まれるきっかけにもなっているんですね。
まとめ
子どもは好奇心のかたまりです。危ないことだけでなく、いったん不思議に思ったら、試してみなくては納得しないこともしばしばあります。
親に余裕があれば、多少のことは家の中や家の周辺でもできますが、木や土や水や空を存分に与えることは、親にはできません。
また、一人っ子の増えている昨今、仲間がいるというのは、本当に貴重なことだと思います。これもまた、どんなにお金を出しても、与えることのできないものですよね。
今、子育てをする中できゅうくつさを覚えているのなら、「森のようちえん」が子どもをのびのびと育てるためのヒントになるかもしれません。
野外保育「まめのめ」は、自治体からの援助が全くない自主的な保育の場です。認可を受けていないというと、すぐに、狭いマンションの一室での保育を浮かべる方もいるかと思いますが、森のようちえん全国ネットワークに所属する施設の多くは認可外の自主保育だったり、一般社団法人だったり、「まめのめ」のようにNPOだったりするようです。
たとえば、スウェーデンのように、どんな保育・幼児教育をするのにも自治体の認可が必要な国では、森のようちえんスタイルの園も他の保育・教育施設と同等の扱いを受け、活動内容や理念は尊重されますが、今の日本では、森のようちえんはまだまだ少数派です。認可を取ることで、活動に制限が生まれては、森のようちえんが森のようちえんたるゆえんがなくなってしまうのではないかと思いました。
当たり前のことですが、子どもが100人いたら、100通りの個性があります。子どもの個性、そして能力を伸ばすためにも、その子にあった保育・教育施設を選ぶことは重要ですよね。
野外保育がいい、もしくは早期教育をするべきだ、といった議論よりも、多様な保育のあり方を認めることが先なのではないでしょうか。
【取材協力】特定非営利活動法人子どもへのまなざし