台湾でも屈指の麺店へ

【台湾食べ歩きの旅 #17】『老羅古早味』の愛嬌のあるおじさん。嘉義の人たちは外国人慣れした他の都市と比べ外国人観光客にやさしい。言葉が分からなくても漢字の筆談と身振り手振りでなんとかなるのが台湾の旅

今回、嘉義に到着して、私がまっさきに向かったのは雞肉飯ではなく麺の店。材料がなくなると早めに店じまいしてしまうので、午後7時はギリギリの時間帯だ。

記憶を頼りにその店を探すと……あった、あった。数年前に訪れたときも味がある看板だと思っていたが、今見るとその看板はペンキが剥げていてさらに渋さを増していた。

よく見ると、「麺」の文字の下から「美容院」という文字が覗いている。食堂の前はここに美容院があったのだろう。

台湾人は、米よりも麺を好んで食べるのだが、麺の茹で方やスープにあまりこだわらないので、日本のラーメンのように麺の食感が絶妙で、スープにこだわった店にはあまり出合えない。

だが、嘉義のこの店だけは別だ。野菜や鶏ガラで長時間煮込んだスープに、シンプルでやや固茹での麺。

具材は肉そぼろ、もやし、ニラのみ。あっさりしているのにコクがあり、お酒を飲んだあとに食べたくなるサイズ感。スープを一口飲んで「はぁ」とため息が出てしまう。

【台湾食べ歩きの旅 #17】シンプルだけれど旨味たっぷりのスープ麺。日本のラーメンに近いが、もっとあっさりしていて小ぶりなので食べ歩き向き

もうひとつ、この店で食べておきたいのが豚の血ともち米を煮固めた豬血糕(ズーシエガオ)。

【台湾食べ歩きの旅 #17】嘉義名物の豬血糕(ズーシエガオ)。よく見ると豚の血ともち米に加えて、みじん切りのさつまいもが入っており、ほんのりと甘いので食べやすい

夜市などでおなじみの台湾珍味だが、ここではみじん切りにしたサツマイモを一緒に練り込んであり、豚の血の臭みがないどころか、ほんのり甘みがあっておいしい。

嘉義の名物で他の地域ではなかなかお目にかかれない屋台グルメなので、ぜひ食べておきたい。

大好きな麺で腹ごしらえをしたので、次は夜市へ繰り出し、さらにビールが飲める食堂も見つけたい。嘉義の夜はこれからだ。

(つづく)

みつせ のりこ:90年代から台湾と関わり、台北で留学や就職、結婚や子育ても経験。現在は執筆や通訳、取材コーディネートの仕事で日本と台湾を往復している。著書に『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾縦断! 人情食堂と美景の旅』『台湾一周!!途中下車、美味しい旅』など。株式会社キーワード所属。