映画『ミッドナイトスワン』の内田英治監督が新堂冬樹の恋愛小説を映画化した『誰よりもつよく抱きしめて』は、強迫性障害による潔癖症を発症し、恋人に触れることもできなくなってしまった絵本作家の水島良城(三山凌輝)と、恋人の桐本月菜(久保史緒里)の心震わす静謐な愛の物語だ。
ヒロイン月菜を演じた久保史緒里(乃木坂46)、月菜に想いを寄せる韓国人シェフのイ・ジェホンを演じたファン・チャンソン、そして良城と思いを共有できる村山千春を演じた穂志もえかの3人に話を聞いた。
キャストが感じたそれぞれの役とは?
――まずはご自身が演じられた役柄についてお伺いします。久保史緒里さんが演じたのは、潔癖症で苦しむ恋人・良城(三山凌輝)を支える恋人、桐本月菜。葛藤が多い人物ですよね。
久保 月菜は、すごく繊細な心の持ち主だなと思いました。大好きな良城に触れることができないという大きな壁がありながらもそばで長い時間を過ごすのは、彼に対する想いが強かったからだと思うんです。良城を想いやる温かい心と、女性としての強さも持っている女性だと思います。
――月菜に共感できたところはありましたか。
久保 月菜は考えたくなった時に一人で海を見に行くんです。私も一人で考える時間をすごく大事にしているので、月菜にとって海を眺める時間は特別な大切な時間だったんだろうなと想像しました。
――チャンソンさんが演じたのは、月菜に想いを寄せる韓国人シェフのイ・ジェホン。日本語のせりふがすごく多くて大変だったのではないでしょうか。
チャンソン そうですね。普通に日本語で会話するのは問題がないのですが、台本に書いてある会話をするのは難しかったですね。日本にいるとみんなと普通に会話できるのに、韓国に戻ってせりふの練習をするとめっちゃ下手くそで、「なんで?」と思っちゃう。でもモヤモヤしながら飛行機に乗って日本の現場に着くと、不思議ですがちゃんとせりふが言えるんです。日本の空気は何か違うみたい(笑)。
――現場に行くとスラスラしゃべれちゃう?
チャンソン そうなんです。現場でみんなに挨拶して、監督と話して、現場の雰囲気を感じると、イ・ジェホンという人物になれる。
――不思議ですね(笑)。チャンソンさんが演じたイ・ジェホンは、すごく静かだけど心の奥に情熱がたぎっている人ですね。
チャンソン そうですね、夢という情熱を止まらず持ち続けている一方で、愛をちゃんと感じられない人です。でもその気持ち、ちょっと分かります。僕も練習生時代、そんな感じだったから。練習生は毎日毎日練習して、結果を出さなきゃいけない。キツイから恋愛に逃げたくなるんだけれど、それは誰かを愛したいんじゃなくて、ただ休みたいだけなんですよ。ジェホンを演じる時に、僕はその時の気持ちを思い出しながら演じました。