昨年ソロ活動10周年を迎えたTAEMINが、6年ぶりとなるアリーナツアーを開催、その幕開けとなった神奈川公演の様子をお届けする。「ライブを観に行った」というよりも「アート作品を体感しに行った」と言ったほうがしっくりくるような、そんな時間だった。
約30分間ノンストップで歌い踊る圧巻のステージング
9月13日~15日の神奈川公演を皮切りに、12月の兵庫公演まで、全国5都市11公演が行われている『2025 TAEMIN ARENA TOUR ‘Veil’』。本ツアーは“ベールの後ろに隠された偽善と禁忌”がテーマとなっており、メインステージは神殿のような作りで、背面の大きな柱のセットが“ベール”で覆われている。そのステージから続く回廊がアリーナ席の中央前方を囲み、ライブのステージというよりも演劇の舞台セットのような様相だ。
ライブの始まりもサウンドで盛り上げ、観客のテンションをあげてスタートという定番の形とは正反対とも言えるようなものだった。少々薄気味の悪い音楽が鳴り出すと、静かな闇に包まれたステージにスモークが立ち込み、真っ黒のマントをかぶった人が回廊をゆっくりと歩いて巡る。何かが始まる期待感というより、不安感が煽られる。やがて炎が上がり、ステージ左右の大型ビジョンにメッセージが記されたのち、正面の壁が左右に開くと、真ん中から十字架にかけられたTAEMINが登場。
会場の音が一切消えて静寂が訪れたのち、テミンが息を吸い込む音が聞こえ、『Heaven』でライブは幕を開けた。キリストの磔刑を模した絵画や彫刻を見ているような感覚もあり、それが動き出すという不気味さもあり、かつ、ここからライブが繰り広げられるという高揚感もあり……“ライブ”というものでは味わったことのない感情が沸き立った。
そこから約30分以上、テミンは歌以外の言葉を発することなく、 “偽善と禁忌”を己の肉体から生み出される歌とダンスで表現していく。生バンドの演奏により、楽曲はテーマに合わせて恐怖心を引き出すように重低音のリズムを際立たせていたり、不穏な音が入っていたり、その一方で、ピアノや鐘のような音色で一筋の希望のような光を感じさせたり、新曲かのように印象を変えているものもあった。
そして、TAEMINがその音を時に従えるかのように、時にまとうかのように、時に対峙するかのように、時に巻き込まれるかのように。曲ごとに色を変えて歌い、踊る。ダンスでは細かな音も一音一音捉える精巧な動きもあれば、糸をつむぐような繊細な動き、パワーがみなぎる激しい動き、躍動感あふれる動きなど、そのスキルを余すことなく詰め込む。
歌でも低くささやくような歌い方から、高く透き通るような歌声まで、多彩な歌声を聴かせる。演出も細部までこだわりが尽くされており、檻の中に入って囚われの身のような場面を作ったり、スポットライトの下でまるで天に召される瞬間のような神々しさを感じさせたり、スモークの中でひざまつき神に願いを乞うような切実さを見せたり――1曲1曲の世界観を見せつつテーマを底通させる。
もともと楽曲自体のポテンシャルが高いとも捉えられるが、その中にあった一面を引き出し、今までのライブでは見たことのなかった景色を作り出していた。またその景色の中のTAEMINは圧倒的な“生”を感じさせる瞬間もあれば、その反対の“死”を浮かび上がせる瞬間もあり、これは“ライブ”を超えた芸術作品なのだと感じた。































