豚肉はメキシコ産。

「メキシコの豚肉は味が安定しているし、サイズがちょうどいいんだ。自分で整形したものを0℃に保った加工場で3日間ウエットエイジングしたものを使っています」

カツカレーは、ヒレもロースも共に140グラム。かなりボリュームがある、生パン粉を付けた肉を155℃に熱した油で揚げる。油はラードとサラダ油のブレンド。

低温で3分揚げることで、やわらかく仕上げることができるそうだ。

神保町にカツカレーで知られる洋食屋がある。その洋食屋のカツカレーは、カツの上にカレーがかかっているスタイル。けれど、ジーエスのカツカレーはそうではない。カツを3回愉しめる盛り付けになっている。

まずは、テーブルに置かれたフランスはロレーヌ産の塩をカツにかける。さっぱりと味わえるだけでなく、塩がロースの脂身の甘さをより際立たせてくれる。

次に、トンカツソースか、ウスターソースをかける。個人的には、スパイシーなウスターソースが好きだ。

最後にカレーをつけて、カツカレーとして賞味する。

塩、ソース、カレー。ひと皿に盛られたカツカレーで、3通りの味わい方ができるとは。カツカレーの面白い食べ方を教えてもらった。

最近人気が高まりつつあるスリランカのカレーは、日本の鰹節のような魚粉でとった出汁を使う。けれど、齋藤シェフはスリランカ産のスパイスでカレーを仕込むものの、魚粉でとった出汁は使わない。

フレンチシェフの発想で、ビジュアル重視。皿にご飯とカレーとカツを盛ったら、その上にスパイスと魚粉をかける。

「魚粉をカレーに載せることで、魚粉の風味を活かすことができます。自分で魚粉をかき混ぜて食べた方が、より香りが残るんだ」

カツカレーは3つの食べ方がある。しかも魚粉を混ぜたり、混ぜないで食べるとなると、さらにいろいろな味わい方、愉しみ方ができそうだ。

「今日はロースのカレーを食べたの? つぎはヒレカツにしてごらんよ。うちでいちばんうまいのはヒレカツなんだ。絶対旨いから(笑)」

この店をプロデュースした、フレンチ界の巨匠がすすめるのだから、まずまちがいない。なぜならシェフ自らが整形した肉を使っているのだから。

ヒレのカツカレーは、ロースよりも200円高い。でも、シェフが自慢するぐらいなので、次回はヒレのカツカレーを頼もうかな。

【カツとカレー店 ジーエス】
住所/東京都港区虎ノ門1-8-4
電話/03-6550-8141
営業/11:00〜15:00(LO14:30)、17:00〜売り切れ次第(目安は20:00頃)
定休日/日曜
※価格はすべて税込

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。