「伊弉冉一二三」というキャラが好きになったきっかけに

歌広場:たまたま『ヒプノシスマイク』のキャラクター紹介動画を観ていたところ、「伊弉冉一二三」という男が目に留まったんです。職業はホスト。それだけしか情報がない。でも、そこでピンと来たんです。「ホストなのに、456(ジゴロ)ではなく123(一二三)ということは……このキャラ、裏があるな!」とピンときて。

名前の時点で「女性があまり好きではない」ということが想像ついたんです。実際にオーディオドラマを聴いてみたところ案の定、極度の女性恐怖症でした。それを克服するためにホストの世界に乗り込んでいて、自己暗示をかけて「女好きのホスト」として振る舞っていた。……ほらみろ!(※渾身のドヤ顔)

――どこに向かっておっしゃっているんですか。

歌広場:で、そこから急激にコンテンツそのものにハマっていきました。一人のキャラクターがきっかけになったんですよね。

――伊弉冉一二三というキャラクターが「ヒプノシスマイク」の入り口になったと。

歌広場:そうですね、それにコンテンツ全体を最初から好きになろうとすると、疲れてしまうと思うんです。

僕の場合は、好きな「推し」を一人見つけて、その人を中心にコンテンツを理解するというスタンスなんですが、その過程が楽しいんですよね。

――様々なエンタメが供給過多の時代だと、とくにそれはあると思います。

歌広場:例えば、僕は宝塚も大好きなんですけど、まったく情報がない人がいきなり「宝塚に興味を持って」、と言われても「どこから入っていいかわからん!」となると思うんです。僕の場合は、好きな「推し」を一人見つけて、その人を中心にコンテンツを理解するというスタンスなんですが、その過程が楽しいんですよね。

現在、宝塚での「推し」は誰?

――歌広場さんはニコニコ生放送で、毎回宝塚のOGを迎えるトーク番組「あのOGにお会いしたい」という番組もお持ちですよね。現在、宝塚での「推し」はどなたでしょうか?

歌広場:僕はいろんなところで、星組トップスターである紅ゆずるさんを推しまくっているんですけど、ここでは別の人を推したいと思います。星組に、極美慎(きわみ しん)という男がいるんです。星組の男役の方なのですが、彼は宝塚100周年に入ってきた「100期生」なんですね。この情報だけでも興味がわきませんか?

――……たしかに。

歌広場:宝塚には、僕らが普段見ているような宝塚の舞台を下級生だけで演じるという「新人公演」という特別な公演があるんです。そこに極美慎くんも出演しておりまして、めちゃめちゃカッコ良かったんです。そもそも“極美慎”という名前も、極真空手をずっとやっていたからというのが由来なんだとか。

――……カッコいい!

歌広場:ってなりますよね? こういう話をすると、興味を持ってくれる人も出てくるんですよ。推しやすいですよね。

――今「推しやすい」とおっしゃいましたが、「推しにくい」イケメンっていますか?

歌広場:「今更お前が言う必要がないだろ」という意味では、嵐の松本潤さんの推し方が難しいというか、松本さんのことを話題に出すこと自体がおこがましいというか……。

「好き」と「推す」は微妙に違う

――「好き」と「推す」は微妙に違うところではありますね。

歌広場:「推す」という行為は、「どれだけ熱く語れるか」という側面もあると思うんです。それって「単に顔がカッコいい」だけなら絶対無理なんです。先程の「イケメンは概念」の話に繋がってきますが、グループのバックストーリー、メンバーの生い立ちだとか、その人でしかありえないものが存在しないと、「推しにくい」と考えます。

――歌広場さんの所属するゴールデンボンバーはヴィジュアル系バンドですが、ヴィジュアル系も実はそういうジャンルなんですよね。「メイクをしたキレイなルックス」だけではバンギャルさんの心を掴むことは難しい。

歌広場:今の若手バンドの方をみていると、「顔がカッコいいだけ」っていうのは、もう求められてないんだなと感じます。じゃあ何が必要なのかというと、「応援したくなるような要素」なんでしょうね。言い換えると、皆「推す」理由が欲しいのだと思います。

推す理由が「ない」のではなく、「わからない」場合はむしろ気になる

――ミュージシャンなら音楽だったり、俳優なら演技だったりの技術以外にも、背景にこんなストーリーがある、芸に対してのこだわり、抱えているコンプレックスだとか、そういう部分が「ひっかかり」になると。逆にそれが見えない場合は「推せない」のでしょうか。

歌広場:推す理由が「ない」のではなく、「わからない」場合はむしろ気になるんですよ。以前、赤澤遼太郎くんという俳優さんと一緒にお仕事させていただいたんですが、すごくいい方で、ストーリーが感じられないくらいの「いい子」だったんです。「こんなに爽やかで皆から好かれるような彼が、わざわざ舞台に立たなくてもいいのでは」という気持ちにすらなったんです。もちろん、彼は舞台のことが大好きで役者をやっているんですけど。

そこで気づいたんです。今の僕は遼太郎くんを「推す理由」をまだ見つけられていないだけなんだと。だからこそ彼を推したい。

――話が難しくなってきました。

歌広場:変な話になっていいですか? まだ医療の発達していない時代は、病気のことを「神様の祟りだ」と考えていたこともあったじゃないですか。当時はまだ病原菌のことが認知されていなかった。それが時代が進んで技術も進化して、「これは神様の祟りではなく、病原菌が原因で起きていることなんだな」ということがわかる。それと同じことが、イケメンにもいえると思うんです。

つまり、僕の技術がまだ足りてなくて、わかっていないものがたくさんあるはずなんです。もしかしたら、将来「イケメン」を数値化する顕微鏡的なものが開発されて、「この人はこういうイケメンだ」ということがわかるようになるかもしれない。

――「概念」とされていたものが、将来数値化され、言語化されていく可能性もあると。

歌広場:赤澤遼太郎くんを見たときに、そこに気付かされたんです。遼太郎くんを「イケメン」という概念でとらえることは、今の僕の技術ではできていない。でも「それ」は必ず存在するはずだって、彼に教えてもらった気がします。

K-POP好きとしての一言

――ありがとうございます。そして、K-POP好きとしても知られる歌広場さんですが、今年は防弾少年団(BTS)がビルボード・チャート1位を獲得したりと、大きな話題を集めていました。デビュー当時から応援していた歌広場さん的には、感慨もあるのでは?

歌広場:「ほらみろ」(※再びのドヤ顔)って感じですよね。僕が防弾少年団が好きって言っていた頃は、あんまり同意されなかった。そういう人たちが今「BTS大好き~」とか言ってますからね。SEVENTEENだって、今でこそ「セブチ」という愛称で人気ですけど、デビュー直後くらいからずっと好きなんです。

――ちなみに、大人気になってしまったら冷めてしまうというか、「推せない」と感じたりすることはありますか?

歌広場:皆が推しているような存在になったら、「次へ行こう」と思うことはあるかもしれません。それは別に、青田買いをしてデビュー直後だけワーワー言いたいわけではなくて、僕の座右の銘というか、好きな言葉があるんです。

高校生の時、電車に乗っていると、酔っ払ったおじさんが、「1匹釣ったら次の池へ行け!」って大声で怒鳴ってたんです。何に対して言っているのかは、わからないままなんですけど、「それだ!」って(笑)。

――そのおじさんも、歌広場さんにそんな影響を与えているとはつゆ知らず。

歌広場:それがすごく印象に残っていて。なぜか未だにその言葉をよく思い出すんです。

もちろん、その池自体は巡回しているんで。忘れたわけじゃないんですよ。