5.「女性に対するアンテナの、電源が入っているのか入っていないのかが、わからない。電波を受け取る機能が、作動しているのかどうかもわからない」
「感度低すぎ」発言に続いて、さらに久利生を追いこむ。
言ってみれば、そもそも「アンテナ」の使い方がわかってないんじゃないのか? ということだが、「アンテナがない」とは言いきらないあたりが、愛なのかもしれない。
6.「『久利生方程式』に、女性という存在はうまくハマらない」
検事としての「方程式」に揺らぎがないから、演じるときに悩む必要がない、と語る。ところが、どんな事件にも対応するこの「方程式」、こと女性に関しては、答えが出ないのだという。
「計算式が変わると、円周率なみになるのかもしれない」とのこと。
7.「どっちでもないっていうか。ハイセンスでもなければ、ローセンスでもない生活をしてる」
今回の映画の冒頭には、久利生の部屋が映し出され、彼の寝起きの情景が描かれる。このシーンの挿入は木村の発案。「なんでもない」ところから、映画をスタートさせたかったとのこと。
ハイでもなければ、ローでもないセンス。つまり公平なセンス。久利生公平センス。それが、木村のこだわる「なんでもなさ」だ。
8.「ちょっとこっぱずかしいですね。恥ずかしさがあるっていうのは、きっと、どこかすごく自分に近い部分を晒すのと近いからかもしれないですね」
木村自身のアイデアとはいえ、久利生の寝起きを見るのは恥ずかしいとのこと。起きがけのかすれた声や、ブラインドを開けて朝日の直撃を浴び「おわ!」となるリアクション。
観客にとっては、久利生のプライベートを覗き見するドキドキがあるが、木村自身の「すっぴん」と重なる部分もあるのだろうか。
9.「久利生じゃなかったらたぶん許されてないんじゃないですかね」
今回、久利生が担当する事件は、大使館の裏通りで起きた交通事故。関係者から話を聞こうと、いきなり大使館のベルを鳴らす彼の振る舞いについて。大使館は外交特権によって守られており、日本の司法が及ばない「国内の外国」である。
検事としては明らかに御法度。それにしても、「許されない」行為が、粗暴に映らないのはなぜなのだろう。
10.「みなさんがこの作品とコミュニケーションをとってきてくれたから、成立する話」
9を受けてのコメント。
観客が『HERO』という作品を通して、久利生公平を受容しているから、本作の物語も実現している、という認識。つまり、これまでのエピソードでの久利生の無茶な行動が「許されてきた」からこそ、というわたしたちへの感謝の言葉である。