©2015フジテレビジョン ジェイ・ドリーム 東宝 FNS27社
映画『HERO』には、一度観ただけでは味わいつくせない豊潤さがある。

たとえば、ストーリーや台詞を追いかけているだけでは、キャッチしきれない細部に満ちているのだ。ここでは、撮影現場を見学していて印象に残ったエピソードを中心に、本作を「もっと愉しむ」ためのアイデアを提言したい。

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ネウストリア公国という架空の国の大使館をめぐって展開する、今回の物語。

「治外法権」という国際社会上のルールが、大きな壁となって城西支部の前に立ちはだかる。久利生公平(木村拓哉)と麻木千佳(北川景子)は、ネウストリア料理店に赴き、ネウストリア人大好物の特大ソーセージを食べ、さらに彼らが愛する球技ペタンクで「国際交流」を試みる。

地道にコツコツが身上の『HERO』シリーズらしい観点だが、序盤のペタンクに宇野大介(濱田岳)を巻き込む「口説き」の場面には鮮やかなひらめきがあった。

このシーンは、昨年12月、映画『HERO』クランクインの日に撮影された。ペタンクは南仏生まれの実在のスポーツで、ヨーロッパでは子供からお年寄りまで広く愛好されている。

このペタンクに宇野っちを誘い込むくだり、脚本では、久利生が検事室のデスクの上にブール(金属製のボール)を置くという設定になっていた。

しかし、木村はテストでいきなり、ブールをひょいと濱田に向かって放り投げた。濱田は慌てて受け取りそこなったが、そこで木村は「ダメだよ〜ちゃんと取らないと〜」と発言。まるで、久利生の台詞のようだった。

このアドリブで、さまざまなものが一気に結びついた。