「キムタクはもう終わった」
そんなことを囁かれ始めてもう何年が経つだろうか。
『あすなろ白書』の取手治役で人気に火がついた後、90年代半ば以降、『ロングバケーション』、『ラブジェネレーション』などで次々と高視聴率記録を樹立。その勢いは2000年代になっても衰えず『HERO』はその後、映画化もされる大ヒット。まさに90年代半ばから2000年代初頭の木村拓哉は“HERO”そのものだった。
だが、近年木村拓哉は「キムタク」という呪縛に苦しめられているように見えるときがある。
かつて木村はインタビューで生まれ変わったらもう一度、芸能人になりたいか、と問われ「いや、もういいです」と笑って答えている。
「『キムタク』は一度きりで(笑)」(『AERA』2014年7月28日)と。
彼と同級生でもあるマツコ・デラックスは、「木村拓哉は生身の人間がいちばん手を出しちゃいけないところに手を出しているような気がする」(『続・世迷いごと』)と評したうえで「永遠の若さと永遠のアイドル性。この呪縛に耐えられるのかしら」と綴り、さらにこう続けている。
「これからの木村拓哉というのは、ある種、壮大な実験をしているようなものね。人間、ずっと20代でいられるかって実験。それを乗り越えられたら、すごいよ。神よ」
40歳を超えた木村拓哉。「もう終わった」と言われてしまうのも無理からぬことかもしれない。だが、2014年、“HERO”は文字どおり帰ってきた。第1シリーズから13年の時を経て続編となる『HERO』第2シリーズが放送されたのだ。
始まる前は「なんで今さら?」という声も少なからずあった。だが、木村拓哉は10年以上前に演じた久利生公平の魅力を一切損なわないまま、そこに円熟という名の魅力をさらに加え、予想を上回る好結果を残したのだ。それはまさに「永遠の若さと永遠のアイドル性」に挑む“HERO”のものだった。