Q4 「片づけられない、モノをなくす・・実は私も。これって遺伝ですか?」

A.遺伝でしょうね

高橋「遺伝でしょうね」

――あははは、そうですか!(笑) 最近、大人のADHDという言葉を耳にすることもありますが。

高橋「ほとんどの人はADHD“っぽい”んだと思います、ぼくも含めて」

――私もです(笑)

高橋「本当のADHDは多動というより、衝動性の方が問題であることが多いのですが、うかつさ、忘れ物の多さというのは、ぼくはチャーミングなんじゃないかなと思っています。いつも忘れ物をするけど、みんなが助けてくれる人っているじゃないですか、ぼくみたいに(笑)」

――完璧な人間なんていませんよね。

高橋「本に出てくる、ぼくの留学時代の上司の教授もそうです」

――彼女はディスレクシア(発達性読み書き障害)であることを公言して、大量の書類を秘書やまわりの人に読んでもらうことで、乗り切っていたというエピソードですね。世界的に有名な研究をされたということとのギャップに驚きました。

高橋「ですから、生活に暗い影を落とさないかぎりはOKだと思いますよ」

――親はまた、自分に似た欠点だから気になるのですよね。

高橋「おかあさんが味方になってあげればいいんじゃないですかね。親子は遺伝子を半分あげた仲間なんですから」

――なるほど、それは思いつきませんでした、同じ個性を持った仲間なんですね。

高橋「そうですよ、最大の理解者になってあげてください。忘れ物が多くても、自分は今までそうやって生きてきたし、大丈夫だよ、と先発隊として言ってあげればいいんです。忘れ物多いひとはけっこう友達も多いよ、とかね」

――個性が遺伝してしまうのを、怒っても、自分のせいだと謝っても仕方ないですもんね(笑)

最後に

余談になりますが、筆者の5歳の娘はよく泣き、時々、ウソ泣きさえします。かなりおしゃまで、毎日、自分なりのファッションを楽しんでいます。演技派という意味で、「将来は女優?」と言われたことも何回かあります。

とても私に似ているとは思えないのですが、と高橋先生に言うと、「おかあさんも実は泣き虫ってことはないですか? 環境でおしゃまになったり、泣き虫になったりすることって、ぼくはないと思っているんですよ」という答えが返ってきました。

しばし、記憶をたどってみると、そういえば、筆者は学生時代、演劇をかじっていたのでした! まったくの盲点で、遺伝子のなせるわざとはこういうことか・・と実感したひと時でした。

小児科のぼくが伝えたい 最高の子育て』を通じて、子どもを育てるのに必要なことは、外側ではなく、自分の、そして子どもの内側にあるものなのではないかと気づかせてもらいました。

今、子育てに悩んでいるママも、本書をひもとけば、きっとふんわりした自信が生まれてくると思います。「子どもなんて、かわいいから育てるだけですよ」という高橋先生の笑顔が印象的でした。

【取材協力】高橋孝雄さん

高橋孝雄先生

慶應義塾大学医学部小児科教授。医学博士。専門は小児科一般と小児神経。日本小児科学会会長。

1957年8月生まれ。1982年慶應義塾大学医学部卒業。1988年から米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で、医師、教授として活躍している。

趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。