©2015フジテレビジョン ジェイ・ドリーム 東宝 FNS27社

シリアスなところでは、病室のベッドに寝ている久利生と、彼を見舞う雨宮とが、互いの顔を見ずに言葉を交わす場面は凝視に値する。

鈴木雅之監督の現場は、長回し撮影が多い。ここでも、それぞれを、異なる角度から、延々長回しで追いかけた。

窓に向かって話しつづける雨宮も、横たわったままの状態で語りつづける久利生も、演じる側にしてみればかなり難易度は高かったと思われるが、このふたりは、見事に独自の情緒を生み出した。

まるで、舞台の1ワーンを目撃したかのような、濃密なひととき。松の眼差し、そして、木村の発声は、誰にも真似のできないグルーヴを生んでいる。見直すたびに発見のある、重要なシークエンスだ。
 

そして、久利生と雨宮が、最終盤で迎える並木道のシーン。詳細は差し控えるが、ここで雨宮が口にした言葉が、撮影中に感じていたのとは別の意味を持って、映画のなかに響いていたと、木村は振り返っている。

つまり、木村拓哉自身も、完成した映画を観て、初めて気づいた、雨宮の想いがあったのだという。
 

いずれも、ゴールデンコンビと謳われる木村拓哉と松たか子なればこそ、実現したコンビネーション。繰り返し、味わいを深めてほしい。