赤ちゃんが泣くのはママだから
――ママたちが飛びつくのって、“夜泣きストップテク”とか、即効性があることだと思うのですが、それ以前に、知っているのと知らないのとでは全然ちがってくる赤ちゃんの睡眠のトリビアみたいなことも、この本には書かれています。
たとえば、赤ちゃんが泣くのがすごくつらい、自分が悪いと思ってしまうママは多いのではないかと思います。
清水「自分が出産するまでに赤ちゃんを抱いたことがないという女性も増えているので、赤ちゃんがなぜ泣くのか、どういう時に泣くのか、わからないことも多いんですね。
昔は、まわりに赤ちゃんがいたので、泣き止ませようとがんばっても、どうにもならないことがあるということが体感として感じ取れていたと思うんですが、今は自分の赤ちゃんが初めての赤ちゃんという人も多いですよね」
――私もそうでした。寝ているだけでも、不安で不安で仕方なかったのを覚えています(笑)
清水「赤ちゃんが泣くってことの意味を、私たち大人はネガティブにとらえがちですよね。赤ちゃんが泣いていると上の子も気にしますし。
基本的に赤ちゃんは不快で泣くものですが、泣き止ませることよりも、なんで泣いているのかな? 大丈夫かな? と思ってあげることが、信頼関係をつくっていく上で大事なんです。どうしても泣いていると、泣き止ませることが母の力だというイメージがありますよね」
――知り合いに、自分では泣き止ませられなくて、自分のお母さんがひょいと抱き上げたら赤ちゃんが泣きやんで、自信をなくしたという人がいます。
清水「もしかしたら、普段抱かれていないおばあちゃんに抱っこされて、びっくりして泣きやんだだけかもしれないですよね」
――ママだと一番泣く、というのは自然だと考えていいのでしょうか。
清水「私は赤ちゃんは、お母さんなら泣いてもいいと思っていると思います。泣いても受け止めてくれるのがお母さん、泣いたら抱いてなぐさめてくれるのがお母さんだと」
――もしかしたら、思春期になって、親にひどいこと言うのも泣くのと同じかもしれないですね。うちの上の子は中学生で、外ではいい子だと言われるんですが、私にはすごい口の利き方をすることがあります(苦笑)
知っておきたい”寝言泣き”って?
――本に出てくる”寝言泣き”ですが、これは知らなかったです。赤ちゃんは起きているように見えて、寝ていることがあるということですよね。
清水「いわゆるレム睡眠の時ですね。これを知らないと、赤ちゃんが寝ているのに逆に起こしてしまうこともあります」
――絶対に、起こしていたと思います。
清水「私も、起こしてました(笑)」
――起き上がったりするように見える子もいるとか。でもその後、数分待っていると、また何事もなかったかのように眠ってしまうんですよね。見てみたかったなあ。
清水「はじめて体験された方で、“待つ時間が苦しかったけれど、実際にすーっと寝てくれた時はとても感動しました”と言っている方もいました」
――本当に起きているみたいなんですか?
清水「赤ちゃんにもよります。すごい勢いで泣く子もいますし、いかにも寝ぼけてるなって感じの子もいますが、お母さんの感じ方もそれぞれです。
たとえば、寝言泣きの実験に協力してくれたあるお母さんは、”うちの子、全然起きないんですよね~”と言っていたのですが、赤ちゃんの活動量の記録では起きているんですね。赤ちゃんが泣かないで起きている場合、赤ちゃんと一緒に起きてしまうお母さんもいれば、まったく起きないお母さんもいらっしゃる」
――彼女は後者だったんですね。
清水「出産直後は誰しも心配性になるものですが、その後はお母さんのキャラクターが赤ちゃんの睡眠の性質にも影響するようです」
使えるネンネグッズは親子によってちがう
――本には、ネンネグッズとして、手触りのいいタオルやぬいぐるみなどが紹介されていましたが、これも、親子によっていちばんいいやり方やモノを探していけばいいのでしょうか。
清水「そうですね、絵本でもいいですし、知り合いの息子さんはプラレールと一緒に寝ていたそうです。ちょっと堅そうな感じがしますが、本人は”電車さんをねかせるんだ”って言っていたそうですよ。
それぞれの習慣がいい思い出になるのだと思います」
――決まった正解はなくて、カスタマイズしていいのですね。
清水「赤ちゃんとの生活は、メリハリが少なくなりがちです。お仕事していた方は特に。ですが、赤ちゃんと過ごす生活のなかで、もうすぐ寝る時間なんだよ、遊ぶ時間だよ、と意識することは大事ですね。
特に、私は夜寝る前に、娘とのコミュニケーションの時間をたっぷり取っていました。
小さい頃は、絵本を読み聞かせて、そのうち小学生になると普通の本になり、さらに娘が私に読んでくれるようになりました。今はもうなくなりましたが、コミュニケーションの一つとして、娘と夜寝る前の時間を持てたのは幸せだったなと思っています」
――今日は貴重なお話を、ありがとうございました。
【取材協力】清水悦子(しみず・えつこ)
夜泣き専門保育士。NPO法人赤ちゃんの眠り研究所代表理事。
元医療従事者の視点を生かし、夜泣きは睡眠障害の一種と考え、 生活リズムを主体とした夜泣き改善方法にたどり着き、 保育士資格を取得。お茶の水女子大学大学院修了、 東京大学大学院・教育学研究科博士課程に進学。 現在は茨城キリスト教大学で助教として学生たちに指導。『 赤ちゃんにもママにも優しい安眠ガイド』シリーズで25万部を突破。