ずばり、「バンギャル活動がしやすい」職種・会社は?
――ここまで、バンギャルさんの就活について解説いただいたわけですが、最近の就活の状況は実際どのようになっているのでしょうか。
佐野:今、新卒の就活は活況で、企業側が苦労しています。今年の2月頃の話ですが、2019年新卒が採用人数に達したかで、足りてないと答えた企業が約51%なんですよ。
かつ、約70%の企業は採用に携わるマンパワーが足りていないという調査もあります(株式会社リクルートキャリア 「就職白書2019」)。
一方、学生のうち、約70%は就活を満足して終えています。だから、そんなに悲観する必要はないです。応募がたくさん集まる人気企業は当然厳しいので、就活が楽とは感じないかもしれないですけど、平均的に見たら、1人2社ぐらいは内定が取れるような水準にはなっています。
――そんな状況の中で、バンギャル活動がしやすい職種や会社とは、どのようなところになってくるのでしょうか?
佐野:おそらく、時間がどれだけ融通がきくかがライブの行きやすさに直結するので、時間をコントロールしやすい企業の特徴をお話します。
1.オンリーワンのサービスを持っている企業
オンリーワンのサービスや商品を持っている会社は、長時間労働になりにくいです。お客さんがその会社から買うしかないという状況です。
例えば砂漠にいると仮定して、そこにミネラルウォーターを売っている会社が「5千円です」と言ってきて、他に水を売っている会社がなければ買うしかないですよね。このように他に売り手がいないと、単価が高くなるんです。そうすると結果的にたくさん働かなくてもよくなります。
オンリーワンのビジネスをやっている企業の探し方はシンプルで、ナビサイトのフリーワード検索で「ニッチ」「ニッチトップ」「グローバルニッチ」「リーディングカンパニー」「独自技術」などを入れればすぐ出てきます。
2.定時が早い企業/土日が休みの企業
定時は、早くても東京だと5時半頃ですかね。募集時点で確認できるので、必ず見ておいてください。
ツアーのファイナル公演などに土日が多いとすると、土日休みになりやすい法人向けビジネスの企業の方が圧倒的にいいですね。
反対に百貨店や宿泊、飲食といった個人を顧客にしている営業の場合は、土日が繁忙期になることも多いです。
3.勤務形態が柔軟な企業
例えばエンジニアやデザイナーといった「手に職」系の企業などでは、リモートワークを推進している企業もあります。仕事さえやってくれれば、働く場所は問わないということですね。また、営業職で外回りから、そのまま直帰できる企業も、ライブに行きやすいですね。
特徴としては比較的に単価が安いサービスや商品を売っている営業は、一人で外回りをさせてくれることが多いので、ライブに行きやすくなります。
反対に何千万や何億という商談の場合は上の上の上司を引き連れての営業となるので、一人だけ直帰するのはなかなか難しいかと思います。
「趣味に没頭できる人の優秀さ」を活かそう!
――では最後に、就職活動するバンギャルさんにアドバイスをお願いします。
佐野:ヴィジュアル系のファンの方は、好きなものについて調べる力が半端ないと思います。就活では、その愛を企業側に向けてみてはいかがでしょうか。
好きなバンドマンのTwitter通知を設定して最新の情報を常に追いかける感覚で、企業の情報も追いましょう。どんどん詳しくなれば、面接で言えることも増えてきます。
――その愛がいずれバンドマンを愛する原動力(お給料など)につながると考えていただければいいですよね。
佐野:ヴィジュアル系バンドのような「趣味に没頭できる人の優秀さ」を書いている本(「アルバイトだけでもまわるチームをつくろう 増補改訂版」/鈴木 亮・著)もあるんですよ。
その理由はすごくシンプルで、「趣味のために仕事を頑張ることができるから」です。
つまり、マネジメント側からすると、変にモチベーションアップをしなくていいんですよね。「ライブに間に合わせるためにこの1時間を集中しよう」というように、自発的に頑張り始めるということです。
それにバンドのファンの方って、無茶な要求はしていないんですよ。「今日は30分だけ早く帰りたい」だったり「この日だけはどうかお休みを」みたいなケースが多いですよね。
しかもその30分や1日が許されれば、会社に恩義を感じるので、会社への定着率が上がるんですよ。
採用担当者や社長さんには、強烈な趣味を持っている人が、どれだけ優秀なのかを分かってほしい。「マネジメントのコストが下がるぞ」と、言いたいですね(笑)。
社会人バンギャルさんへのOG訪問、そして佐野さんからのアドバイスで、バンギャル活動も仕事も充実させている、あなたの未来をイメージできたでしょうか?就活に挑むバンギャルさん、ご健闘をお祈りしています!
(取材・構成協力/藤谷千明)
佐野創太
1988年生。慶應義塾大学法学部政治学科卒。株式会社パソナにて人材紹介の法人営業、新規事業、採用担当を兼務した後に独立。採用情報と新サービス情報の赤ペン先生/HRライター・編集者、「神谷敦彦」名義でV系深読みライターとして活動している。「誤解の解消」を軸にジャンルを問わずに、HR、抹茶、不動産、ラブテックのスタートアップにCWO(Chief Writing Officer)として参画。共働きパートナーシップの本を共著で執筆中。