ブレーキは箱根駅伝特有のもの

箱根駅伝のドラマとして「ブレーキ」があるけど、あれは箱根駅伝の雰囲気にのまれてしまっている選手に多い。今までは体験したことないような応援の中、いつも通りの力を出せない。
いつもなら、水分補給もちゃんとするのに、集中が応援の声にいってしまって脱水症状になってしまうことも。それは大学生という経験値がまだ低いからというわけではなく、箱根駅伝っていう独特の雰囲気によるもの。
大ブレーキだけが取り上げられるけど、小ブレーキなんていっぱいあるしね。

選手はカメラを意識している?

走っている選手は何を思って走っているかというと、「カメラに映りたい!」ということ。少なくとも僕はそう思って走っていた(笑)
特に先頭集団を走っている選手の動きに注目して欲しい。基本的には集団の内側にいた方が楽なので、その集団の外に出たり、前に出たりする選手はカメラに映りたいって思っての行動の可能性も。
追い抜かれたときの反応と対応も注目して欲しいポイント。追い付いてきた選手の力にもよるけど、並走できる選手は追い付かれることを想定して、追い付かれてから並走しようと少し休んではしていることも。20㎞という長い距離なので、どこかで気楽に走っている部分もないと最後まで走り切れない。
選手の表情にも注目。カメラを意識して、ちょっときつそうな顔をしておこうかなと考えている選手もいるのでは。

中継地点でタスキを渡したあと、倒れる選手が多いのも箱根駅伝の特徴。あれは、ほぼほぼ演技。
普段の練習、普段のレースであそこまで倒れるってほとんどいない。
ゴール後、立ち止まりたい、座り込みたいって気持ちにはなるけど、倒れこむのはカメラを意識していることが多いかな。(※西田隆維さん視点なので個人差は大きくあると思われます)

意外と知らない裏側もある!

大舞台で、できるだけ良いコンディションで走りたいという想いは選手もサポートする側も一緒。
でもそれが思いがけないハプニングに繋がったりもする。過去こんな事件があった。
意外と知られていないが、ほとんどの選手がアップシューズとレースシューズを使い分けている。
そして箱根駅伝を走る選手にはそれぞれ付き添いの選手がいて、選手のウェアを預かったり、
身の回りのことをサポートしている。
箱根駅伝って寒いことが多いから、付き添いの選手が気を利かせて選手のレースシューズをストーブの前に置いて温めておこうと。
ところが、ストーブの近くに置きすぎて、レースシューズの一部が溶けた。
レースシューズが溶けた選手は、急遽溶けた部分をテープで補強して何食わぬ顔で走っていたなんてこともあった。

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西田さんや他の箱根駅伝経験者方々との話の中で
「箱根駅伝直前になると、マネージャー(主務)が寝言で「72!!」とラップタイムを叫んだりしていた」(※箱根駅伝選手の目安となるペース設定が1㎞3分、400m72秒であるため)と言った驚きのエピソードもあった。
きっと出場する大学の選手や関係者にとってはレースが終わるまでは気の休まるどころではないのだろう。
それだけ各大学が毎年しのぎを削りながらの真剣勝負だからこそ我々も夢中になってしまう。


お正月に感動を与える箱根駅伝。
裏側も含めた視点で観戦すると、より楽しめるかも。

 

■西田隆維(にしだ たかゆき)プロフィール
栃木県出身 1977年生まれ
駒澤大学→S&B食品→JALグランドサービス
【主な競技歴】
箱根駅伝4年連続出場。
4年生で出場した2000年開催の第76回箱根駅伝9区区間新(当時)の走りで初の駒沢大学完全優勝に貢献
ユニバーシアード(学生オリンピック)ハーフマラソン銀メダル
2001年第50回別府大分毎日マラソン優勝(2:08'45" 大会日本人最高/当時)
2001年カナダ エドモントン世界陸上マラソン日本代表9位(団体銀メダル)
 

1980年9月5日生まれ 長野県出身(明治大学卒)。世界選手権パリ大会20km競歩 日本代表、アジア選手権20km競歩 金メダル、日本インターカレッジ10000m競歩 2連覇、関東インターカレッジ10000m競歩 3連覇。アジアジュニア選手権10000m競歩 銅メダル、国民体育大会 少年男子共通5000m競歩 優勝。現在はNRC(西田ランニングくらぶ)にてランニングコーチ、明治大学体育会競走部 競歩コーチを務め、ジュニアから市民ランナー、トレイルランナー、シニア世代、アスリートまで幅広くランニング・ウォーキングの指導にあたる。