子供のお客様が多い特殊な環境での初舞台
「僕らが本気でやっていると、伝わるものがある」

撮影:映美

――これまで俳優として活動されてきた中で、サンリオピューロランドでの公演『ちっちゃな英雄(ヒーロー)』は最初アンサンブル(役名がない役)から参加されて、後にメインキャラクターのひとりであるブックス役にもなられているんですよね。

田村:そうですね。

――実は、私は『ちっちゃな英雄(ヒーロー)』が大好きで! 初演キャストと演出家のきだつよしさんの座談会の取材もウレぴあ総研でさせていただいたんですよ。

田村:本当ですか!?

――ものすごく面白い作品ですよね。40分間にあれだけのドラマが詰め込まれていて。

田村:本当にすごいです。とても良い話ですよね。

――初演キャストにお話を伺ったときに「観客はお子さんが多いので、毎公演雰囲気が違う」とおっしゃっていました。少し特殊な公演でもあると思いますが、出演してどんなものを得ましたか?

田村:僕は初舞台が『ちっちゃな英雄(ヒーロー)』だったので、そこに約1年間出演させていただいて、本当に無知な段階からいろいろ勉強させていただいた現場でした。

確かに特殊な現場で、子供も楽しめるように作られている作品ではあるけれど、(客席には)大人もいるという幅広い年齢層の方が観に来られる作品で。でも、僕らは常に“子供に何かを届ける”という意識は忘れずにやっていました。

まだ言葉や感情がよくわからないくらいの年齢の子供も観に来ることがあって、そんな子供たちをいかに集中させるか、が課題で。でも、不思議なもので僕らが本気でやっていると、伝わるものがあるんです。始まる前に泣いている子供も、開演したら泣き止んだりということを経験して、“素直になること”の大事さをそこで学べたかなと思います。

僕が出演していたときの座長の味方良介さんが、「10人の大人を笑わせるより、1人の子供を笑わせる方が難しい」とずっと言っていて。僕はそこから1年間携わっていく中で、その言葉を胸に刻んでやっていました。

――初舞台がサンリオピューロランドでのお子さんのお客様が多い作品、それも長期公演とは、すごくハードルが高いですね……。

田村:だから、当時はめっちゃ怒られましたよ(笑)。いろいろな経験や出会いをあそこでさせていただいて、そこからネルケプランニングさんともお仕事を続けさせていただいています。

アンサンブルをやって、そこから初めて役をもらうということを経験した場所でもあったので、役をいただけることの嬉しさも感じました。同時にそこに伴う責任や、人を楽しませることの難しさなど、本当に演劇、舞台、俳優、表現者としての初歩的なものを学び、体験させていただいた場所ですね。

『刀ミュ』には裏方から参加 スタッフの大変さを実感

――その後、ミュージカル『刀剣乱舞』(刀ミュ)で陸奥守吉行役に決まりますが、最初は裏方として『刀ミュ』に携わっていたことに驚きました。なぜ、裏方に入ることに?

田村:純粋に『ちっちゃな英雄(ヒーロー)』出演期間後に、オーディションを受けても受からず、お仕事が取れなくて。「お仕事がなくて現場にいないよりは、裏方でも現場にいた方がいいし、勉強になる」と当時お世話になっていた人から言われて。確かに、何も関わらないよりは、現場で見て学べることもあるかな、と思って裏方に入りました。

また『刀ミュ』のキャストには2.5次元作品の第一線で活躍されている方もいたので、近くで見てみたいな、と思ったのもあります。『刀ミュ』という作品自体も当時から話題になっている作品だったので、すごい現場だなと感じて、「行きます!」と決めました。

――裏方を経験したからこそ知れたことは?

撮影:映美

田村:本当に裏方さんて大変なんだな、と思いました。メインは演出部の大道具の転換スタッフとして入ったんですけど、ほかにも衣裳さんの手伝いで洗濯物を干したり、搬入や搬出、セットを組み立てている間に小道具を全部運んで舞台袖の定位置にスタンバイさせたり、という作業をやらせていただいていました。

……本当に大変だったんですよね(笑)! 初めての裏方だったので尚更そう感じたんだと思うんですけど、こんなに大変なんだ!と思って。公演が終わってから搬出して、さらに次の日は別の地方に移動とか。

――過酷ですね……。

田村:本当に裏方さんがいるから、役者が舞台に立てているんだな、と身をもって感じました。スタッフさんには感謝していますし、本当にスタッフさんには頭が上がらないな、と思います。

――田村さんが今、舞台に役者として出演するときに、スタッフさんと関わる上で気をつけていることはありますか?

田村:裏方をやっていた当時、キャストの方に何かひと言でも言われると心が救われたりするんです。「搬入・搬出ありがとうございます」とか、本番直前に毎回「よろしくお願いします!」と言ってくださる方もいて、それが嬉しかったりしたので、そういうことは僕もやろうとは思っています。